中国、宇宙産業の発展に向けた計画を発表、民間企業の参入の促進や先進技術の国産化を加速

(中国)

調査部中国北アジア課

2025年12月17日

中国国家航天局は11月25日、「商業宇宙産業の質が高く、安全な発展を推進する行動計画(2025~2027年)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を公表した。計画では、2027年までに商業宇宙産業の高効率なエコシステムを構築することなどを目標として掲げている。中国は近年、宇宙産業を重要産業の一分野として位置づけている。中国共産党第20期中央委員会第4回全体会議で採択された「国民経済と社会発展の第15次5カ年(2026年~2030年)規画」では、重点政策の筆頭項目である「現代的産業体系を構築し、実体経済の基盤を強化・拡大する」の中に、「製造強国」などと並んで「宇宙強国」の建設の加速が位置付けられていた(2025年10月31日記事参照)。この方針を受けて、本計画では、宇宙強国建設を支える新たな産業基盤を形成するための行動計画として、イノベーション能力の強化など5分野22項目の施策を定めた(注、添付資料表参照)。

具体的には、国の科学研究プロジェクトの競争的開放を進め、基礎研究などへの民間企業の参加を認めることで、イノベーションの裾野を広げる。さらに、国の投資による技術成果の商業化を推進し、地方に先進技術の研究成果を実用化する機関を設置するなど、国産技術の産業化を加速する。また、スマート製造や最終組み立て・試験などの重要プロセスを中心に、公共技術プラットフォームを構築し、共通技術の研究開発を行う。これにより技術革新加速を支援し、宇宙科学研究・生産の低コスト化・大規模化を促進する。

また、低コストで再利用可能な商業ロケットの開発を重点支援するほか、低軌道通信・高解像度リモートセンシングなどの衛星システム構築を支援する。法制度面では、国家航天法の立法を加速し、発射許可、輸出管理、データの管理、国際協力などの関連法規を明確化する。中国の宇宙産業の企業などが積極的に宇宙空間における国際規則の制定に参与することを奨励するとしている。

こういった中国の商業宇宙分野の発展の方向性について、米国では警戒感を示す向きもある。米国の戦略国際問題研究所(CSIS)で宇宙安全保障プロジェクトを担当するクレイトン・スウォープ氏は、2025年12月4日に米国下院の科学・宇宙技術委員会に提出した証言において「宇宙関連技術はデュアルユース(軍事・民間両用)であり、かつそれが中国の宇宙戦略の中核をなしている」と指摘する。さらに、クレイトン氏は「商業開発の成果は人民解放軍の軍事力の向上に転用可能」とし、商業宇宙の発展は軍事力強化と切り離せない関係であることを指摘した。

(注)中国科学院、国家航天局などは2024年10月に共同で、「国家空間科学中長期発展計画(2024~2050年)」を制定し、2050年までに宇宙科学強国となるための3段階の発展の目標やロードマップを示していた。それによると、第1段階(2024~2027年)において中国の宇宙ステーションの運営、有人月探査などの実施、第2段階(2028~2035年)において月面科学基地の運営や金星の大気サンプルの採集などを実施し、第3段階(2036~2050年)においては、宇宙科学の重要分野において世界をリードするレベルに到達するとしている。

(藤原智生)

(中国)

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