政策金利を4.50%に引き下げ、中銀は効果の本格化を2026年半ばと予測

(フィリピン)

マニラ発

2025年12月22日

フィリピン中央銀行(BSP)は12月11日、金融政策定例会合で政策金利の翌日物借入金利(リバース・レポ金利、RRP)を25ベーシスポイント(1bp=0.01%)引き下げ、4.50%とすることを決定した。2025年に入ってからは5回、計1.25ポイントの利下げ実施で、2024年8月以降の累積引き下げ幅は2.00ポイントとなる(2025年10月22日記事参照)。また今回、翌日物預金金利と貸出金利もそれぞれ4.00%と5.00%へ引き下げた。

今回の利下げは、インフレ率の緩和が主な背景となった。2025年12月5日のフィリピン統計庁(PSA)の発表によれば、2025年11月のインフレ率は前年同月比1.5%で、低下傾向が続いている。これは主に「食品およびノンアルコール飲料」のインフレ率が前月の0.5%から0.1%に鈍化したことが要因となった。2025年1月から11月までの平均インフレ率は1.6%となり、BSPの目標範囲2.0~4.0%を9カ月連続で下回った(添付資料図参照)。BSPは、2025年通年のインフレ率は1.6%に落ち着くと予想している。2026年と2027年のインフレ率見通しはそれぞれ3.2%と3.0%へ引き上げられたが、依然として「安定」との見通しだ。

フィリピン経済企画開発省(DEPDev)のアルセニオ・バリサカン大臣は、「インフレの持続的な緩和は、消費者保護と経済強化に向けた政府の積極的な関与の結果を反映している」と述べた(12月5日付「フィリスター」紙)。一方、BSPのエリ・レモロナ総裁は、「今回が最後の利下げとなる可能性もあるが、経済状況次第ではさらなる利下げを検討する余地はある」と述べ、「洪水対策の支払いをめぐる問題(注)と世界貿易の不確実性を背景に国内経済は減速し、全体的な景況感は引き続き低下している」と指摘した。一方で、「金融緩和の効果が経済全体に浸透し、公的支出のスピードと質が改善するにつれて、国内需要は緩やかに回復する」との見通しを示した(12月12日付「インクワイアラー」紙、12月12日付「ビジネスワールド紙」)。

2025年第3四半期(7~9月)のGDP成長率は前年同期比4.0%に鈍化し、新型コロナウイルス禍の2021年第1四半期(3.8%減)以来の低水準となった(2025年11月27日記事参照)。この減速は、洪水対策予算問題の発覚を受け、公共建設部門が26.2%の落ち込みを見せたことが背景にある。BSPのゼノ・ロナルド・アベノハ副総裁は、2025年は通年のGDP成長率が約5.0%になると予想した。また、金融緩和政策の効果が本格的に発揮されるのは1~2年後のため、「経済は2026年半ばまでにゆっくりと回復し始めるだろう」と付け加えた(12月12日付「ビジネスワールド」紙)。

(注)フィリピン公共事業道路省(DPWH)の洪水対策事業予算5,450億ペソ(約1兆4,715億円、1ペソ=約2.7円)のうち約1,000億ペソが、請負業者2,409社のうちわずか15社に集中して配分されていたことが問題視されている。

(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)

(フィリピン)

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