第3四半期GDP成長率は4.0%、洪水対策予算問題で大幅に減速
(フィリピン)
マニラ発
2025年11月27日
フィリピン統計庁(PSA)は11月7日、2025年第3四半期(7~9月)のGDP成長率が前年同期比4.0%だったと発表した(添付資料表参照)。前期(4~6月)の5.5%、前年同期の5.2%を大きく下回った。
産業別に成長率をみると、農林水産業は2.8%、鉱工業は0.7%、サービス業は5.5%だった。サービス業のうちの「ビジネス専門サービス」(6.2%)、「金融・保険」(5.5%)、「商業(卸・小売り・自動車など修理業)」(5.0%)などが成長を牽引した。
需要項目別にみると、民間最終消費支出が4.1%増で、政府最終消費支出が5.8%増加した。また、財・サービスの輸出は7.0%増、財・サービスの輸入は2.6%の増加だった。一方、国内総固定資本形成は2.8%減少した。
フィリピン経済企画開発省(DEPDev)のアルセニオ・バリサカン大臣は、国内総固定資本形成のうち建設(0.5%減)では、公共建設部門が26.2%減少したと述べた。洪水対策予算の支払いをめぐる問題(注1)を受け、フィリピン公共事業道路省(DPWH)のプロジェクトに対する要件が厳格化され、支出の進捗が遅れているという。また、民間消費は、台風による経済活動の停滞で減速したとし、2025年の政府目標(注2)の達成は困難だと指摘した。一方、消費者や投資家の信頼回復を目的に、政府は災害対策への投資を含む改革や中長期的な施策を推進していると述べた(11月8日付「フィルスター」紙)。
地場のリサール商業銀行(RCBC)チーフエコノミストのマイケル・リカフォート氏およびフィリピン産業連盟(FPI)のエリザベス・リー会長は、ガバナンスの改善に向けた改革措置を求めている。一方、フィリピン財務省(DOF)は、2025年の成長率は4.7~4.8%に落ち着くと見込んでいるものの、「説明責任のある支出、制度の健全性、高いインパクトのある投資」を優先する計画により、2026年には回復すると述べた。
ケソン市の2024年GDPシェアは6.0%
PSAは11月18日、2024年における高度都市化都市(HUCs、注3)の経済実績を発表した。HUCsの総経済生産高は9兆7,800億ペソ(約25兆4,280億円、1ペソ=約2.6円)で、フィリピン全体のGDPの44.0%を占める。うち、マニラ首都圏北東部のケソン市はGDPの6.0%にあたる約1兆3,300億ペソで、最大のシェアを占めた。次いで、マカティ市(5.4%、1兆2,000億ペソ)、マニラ市(4.7%、1兆400億ペソ)が続いた。
RCBCのリカフォート氏は、ケソン市が最大となった理由について、「規模、不動産基盤、中心業務地区や高層ビルなどの商業開発が進んでいること」を挙げた。なお、2024年の国勢調査によると、ケソン市の人口は308万人で、マニラ首都圏で最も人口の多い都市と発表された(11月19日付「ビジネス・ワールド」紙)。
(注1)フィリピン公共事業道路省(DPWH)の洪水対策事業予算5,450億ペソのうち約1,000億ペソが、請負業者2,409社のうちわずか15社に集中して配分されていたことが問題視されている。
(注2)フィリピン開発予算調整委員会(DBCC)は、5.5~6.5%を目標値とすると発表している。
(注3)高度都市化都市(HUCs)は、1991年地方自治法452条に基づき、20万人以上の住民かつ地方自治体の年間収入が5,000万ペソ以上の地域のこと。フィリピン全土で33都市が該当する。
(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)
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