世界経済、脆弱性残るも2026年から緩やかに回復基調へ、OECD経済見通し
(世界)
調査部国際経済課
2025年12月04日
OECDは12月2日、最新の「世界経済見通し
」を発表した。世界経済の成長率(実質GDP伸び率)について、2025年を3.2%、2026年を2.9%、2027年を3.1%と予測した(添付資料表参照)(注)。2025年9月に発表した前回見通し(2025年9月29日記事参照)から、2025年、2026年ともに据え置いた。OECDは、2025年の世界経済は予測よりも強靭(きょうじん)だったとしつつも、脆弱(ぜいじゃく)性は残るとした。追加関税に備えた貿易の前倒しの効果が薄れるとともに、米中両国の輸入関税率の上昇が企業のコストや最終製品価格にさらに転嫁される中で投資や貿易の伸びが抑制され、2025年下半期は成長が鈍化する見込みとした。加えて、地政学および政策的な不確実性が多くの国で内需を押し下げるとした。
他方、高関税に伴う影響の緩和、好ましい金融環境、拡張的なマクロ経済政策、低インフレに加え、人工知能(AI)利用を支える(AI-enabling)貿易・投資の増加、アジアの新興国の継続的な成長を受け、成長率は2026年を通じて回復基調になると予測した。OECDはリスクとして、関税率のさらなる引き上げや輸出管理といった貿易障壁の高まりおよび変化、期待を下回るAI投資のリターン、予想に反するインフレ率の上昇などを挙げている。
主要国・地域別では、米国は、2025年の2.0%から2026年に1.7%に低下すると予測(ともに前回予測から0.2ポイントの上方修正)。高関税や政府人員の削減、純移民数の減少の影響により、成長は鈍化する見込みとした。他方、これらの影響が低下し、AI関連の投資や金融緩和が継続した場合、2027年に成長率が高まるとの予測を示した。
中国は、輸出の前倒しの影響の低下、米国による高関税の賦課、不動産部門での調整継続や財政支援の低下などを受けて成長が弱まるとし、2025年に5.0%、2026年に4.4%と予測している。
G20加盟国のインフレ率は、2025年の3.4%から2026年に2.8%、2027年に2.5%まで低下すると予測。2027年半ばに、大半の主要国でインフレ目標の水準まで低下するとした。
OECDは保護主義や地政学的な不確実性が高まる中、各国に対して、構造改革を通じ生活水準の向上や強靭性の強化、債務の持続可能性に対する見通しを改善する必要があるとした。その一環として、規制改革を通じた企業のイノベーションや成長の促進、各自のスキルに合わせた労働移動の改善を図るべきとした。
(注)今回の予測は、2025年11月中旬時点で発表・実施済みの関税が2027年まで継続することを前提としている。
(山田恭之)
(世界)
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