2025年通年のGDP成長率予測、4.0%前後に上方修正

(シンガポール)

シンガポール発

2025年12月01日

シンガポール貿易産業省(MTI)は11月21日、2025年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率が前年同期比4.2%だったと発表した(MTIプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。第2四半期(4~6月)の同4.7%(改定値)からはやや鈍化したものの、速報値より1.3ポイント上方修正された(2025年10月17日記事参照)。

MTIは、主要貿易相手国・地域の成長率が当初の見通しを上回ったこと、想定を上回る人工知能(AI)ブームが経済を押し上げたこと、米中貿易摩擦の緩和が進展したことなどを背景に、2025年通年の成長予測を従来の前年比「1.5~2.5%」から「4.0%前後」に引き上げた(2025年8月15日記事参照)。

一方、2026年の見通しは、米国の関税措置強化による外需減退や主要貿易相手国・地域の成長鈍化が見込まれ、「1.0~3.0%」の範囲にとどまるとした。世界経済には依然として下振れリスクがあり、不確実性は高い水準にあると指摘した。

分野別の見通しでは、製造業や貿易関連サービス業はAI需要の拡大により底堅さを維持し、卸売業にも波及効果が期待される。情報通信や金融・保険などのサービス業は、企業のデジタル化需要と安定した金融環境を背景に堅調な成長を維持する見込みだ。国内市場では、公共住宅や土木工事の拡大により建設業の成長が続くと予想される。一方、精密工学やバイオ医薬品分野は需要調整や不確実性の高まりにより成長鈍化の可能性がある。小売りや飲食など消費関連分野は低調な推移が見込まれる。

地場輸出の見通しは前年比「約2.5%増」に

MTI傘下のシンガポール企業庁(エンタープライズシンガポール)が同日発表した2025年第3四半期の貿易統計によると、貿易総額は約3,487億シンガポール・ドル(約41兆4,953億円、Sドル、1Sドル=約119円)で、前年同期比8.5%増加した。輸出は8.2%増の約1,833億ドル、輸入は8.8%増の約1,654億ドルだった(エンタープライズシンガポール・プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。

非石油部門の地場輸出額(NODX、注)は、前年同期比3.3%減少した、エレクトロニクス製品が7.1%増加し、非エレクトロニクス製品は6.5%減少した。2025年のNODXの見通しについては、従来の予測範囲を狭め、「約2.5%増」とした。

(注)地場輸出は、シンガポール国内で生産された物品の輸出。再輸出を除く。

(中島諒士)

(シンガポール)

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