J-StarXで後押し、欧州の環境課題に日本発スタートアップが挑む

(オランダ、欧州、日本)

アムステルダム発

2025年12月12日

EUの欧州グリーン・ディールやクリーン産業ディール(2025年3月4日記事参照)といった政策を背景に、世界が直面するクライメートテックの課題に対し最も先行している地域の1つである欧州を舞台として、ジェトロは海外における起業家などの育成プログラム「J-StarX」において新たに欧州クライメートテック特化型アドバンスドコースをはじめた。2025年11月6~7日に東京で、採択された企業向けに国内プログラムを実施した。

連携先は、欧州最大規模の気候イノベーション機関であるClimate KIC外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。オランダ・アムステルダムに本拠を構え、EUの機関「欧州イノベーション・技術機構(EIT)」のイニシアチブとして2010年に創設、これまでに3,000社超のスタートアップを支援し、累計資金調達58億ユーロ(注)、雇用創出1万5,000人という圧倒的な実績を誇り、「気候に強靭(きょうじん)で、公正で持続可能な未来」を掲げ、イノベーションによるシステム変革を促進している。

Climate KICでは各社専任メンターによる伴走型支援を軸に、分野別エキスパートの指導を通じ、欧州特有の規制、事業慣行、市場構造といった実践的な知見を提供する。さらに、J-StarXの現地渡航プログラムを通じて、顧客・パートナー候補との接点を築き、欧州市場での足場づくりを強力に後押ししていく。

今回、本コースに採択されたのは、次の5社。いずれも欧州の課題解決に直結する技術を持ち、Climate KICの理念と親和性が高い企業だ。

  • Eco-Pork外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:IoT(モノのインターネット)とデータで養豚経営を支援。畜産由来の温室効果ガス削減が課題の欧州で価値発揮に期待。
  • クォンタムフラワーズ&フーズ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:中性子線スピーディ育種®技術で育種期間を低減。持続可能な農業を求める欧州で注目。
  • esa外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:複合プラスチックを再資源化。循環型経済を重視する欧州製造業からの関心が高まる見込み。
  • メタセンシング外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:高感度センサー技術で環境変動を高精度検知。脱炭素施策の高度化を支える基盤技術へ。
  • Innovare外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます:再生可能エネルギー実装を支援する独自技術で、欧州のエネルギー転換に貢献へ。

Climate KICとジェトロが連携して提供する本コースは、欧州にアクセスする希少な好機だ。11月に東京で実施した国内プログラムではClimate KICを招き、5社は欧州市場への第一歩を踏み出した。今後は、現地プログラムも通じて顧客やパートナーとのネットワークを広げ、欧州市場での事業展開に挑戦していく。次世代のグローバルスタートアップを目指す各社の動向に注目が集まる。

(注)Climate KICによる直接資金およびClimate KICの支援やネットワークを通じて呼び込まれた外部資金を含む資金の総額。

(梅田庸一)

(オランダ、欧州、日本)

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