2026年国家予算が成立、国内の歳入すべてを防衛に投入

(ウクライナ、EU)

調査部欧州課

2025年12月15日

ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領は12月10日、2026年の国家予算案に署名した。歳入は2兆9,046億フリブニャ(約10兆7,470億円、1フリブニャ=約3.7円)、歳出は4兆7,673億フリブニャ。2025年の予算案(2025年10月23日付の改正版)と比較すると、歳入は4,020億フリブニャ増加、歳出は1,124億フリブニャ増加した。2026年の財政赤字は最大で1兆9,022億フリブニャと見積もっている。

財務省の発表(12月3日、4日)によると、2026年の防衛・安全保障関連費には2兆8,071億フリブニャが割り当てられており、GDP比で27.2%に相当する。国内からの歳入とウクライナが独自に集める借入金はすべて防衛部門に充てられ、歳出の6割を占める。その他割り当て予算が大きな項目として、社会保障(4,685億フリブニャ)、教育(2,739億フリブニャ)、医療(2,586億フリブニャ)がある。

一般財源の歳入の内訳をみると、輸入取引に対する付加価値税6,836億フリブニャ(前年修正予算比で89.8%増)のほか、個人所得税および軍事税5,603億フリブニャ(78.3%増)、国内で生産された商品・労働・サービスに対する付加価値税3,934億フリブニャ(75.4%増加)、法人所得税3,253億フリブニャ(34.3%増)、輸入取引に対する物品税1,672億フリブニャ(6.7%増)、国内で生産された商品に対する物品税1,616億フリブニャ(26.7%増)など。

2026年にウクライナが必要な外部支援による資金は2兆790億フリブニャで、世界銀行やIMF、G7諸国などの国際パートナーからの資金提供を見込んでいる。

ウクライナとIMFは11月26日、拡大信用供与措置(EFF)に基づく4年間で81億ドル規模の新たな経済支援策について、スタッフレベルの合意に達した。IMF理事会は、税収基盤の拡大や税関の汚職対策などの非公式経済に対する措置、十分な額の資金や保障の確保など、前提条件がクリアされた後に決定を下すとしている(「ウクルインフォルム」12月4日)。

欧州委員会は12月3日、ウクライナが2026~2027年に必要と見積もる資金約1,370億ユーロの3分の2にあたる900億ユーロを支援すべく、ロシアの凍結資産を活用した賠償ローンおよびEUによる借り入れの2つの策を提案した。賠償ローンについては、ロシアの凍結資産の大部分を管理する国際証券決済機関ユーロクリアが所在するベルギーが懸念を示していたロシアの報復措置、訴訟リスク(2025年10月27日記事参照)を阻止するための安全策が提案に盛り込まれた。12月18日からの欧州理事会(EU首脳会議)で合意できるかが注目される。

なお、毎年の国家予算案には月額の最低賃金が規定されており、2026年の予算案では、2026年1月1日からの月額最低賃金が8,000フリブニャから8,647フリブニャに増額された。

(柴田紗英)

(ウクライナ、EU)

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