青島市、外資企業への支援を強化、米中摩擦の影響緩和へ

(中国)

青島発

2025年12月09日

中国・山東省青島市は12月5日、第1回外商投資企業貿易テーマ円卓会議を開催し、貿易環境の変化への対応策を説明した。デンマークのマースク、イタリアのビトロン、ドイツのZFなど外資系企業50社の代表と青島市関係部門の関係者など100人が参加した。青島市の王志俊商務局長が外資系企業の同市経済への貢献と貿易環境の変化、政府の支援策について説明し、高健副市長が今後の外資系企業との協力方針を示した。

王局長によると、在青島の外資系企業数は青島市の企業総数のわずか1.7%だが、同市の税収の12.8%を生み出し、23万7,000万人を雇用している。2025年1~10月に青島市が受け入れた外資系企業による投資額は13億ドルで、そのうち日本と韓国からの投資額は合計1億9,000万ドル(前年同期比73.4%増)となり、ドイツ、オランダ、オーストリアなどEU諸国からの投資は倍増したと説明した。

また、在青島外資系企業による2024年の貿易額は1,741億元(約3兆8,302億円、1元=約22円。前年比6.8%増)で、市の貿易総額の約20%を占めた。ただし、米中貿易摩擦の影響を強く受けたとみられ、2025年1~10月の外資系企業による貿易額は1,205億元(前年同期比17.2%減)と減少傾向にあり、特に同期の対米輸出は34.7%減と大幅に落ち込んでいる。王局長の説明によると、米国向け輸出商品には依然として平均40%前後の高関税がかけられている。

王局長は、そのような状況の下でも、青島市の外資系企業は競争力を維持していると説明した。同市の外資系企業工業製品輸出額は8割超の増加となった。同輸出額の58.3%は付加価値の高い機械・電子製品でこの比率は市平均(外資系以外も含む)より6.5ポイント高い。また、外資系企業の輸出総額に占める先進国向け輸出の割合は62.2%を占め、市平均を18.9ポイント上回った。国別では、特にカナダ向けが51.7%増、EU向けが5.2%増(うちドイツ向けは12.8%増)と好調。

外資系企業に関する政府による支援策について、企業が中国内で稼いだ利益を中国国内に再投資する場合、中央政府の「海外投資家による分配利益の直接投資に対する税収繰り延べ政策外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に基づき投資額の10%を税額控除できる(2025年7月4日記事参照)。また、青島市の外資系企業は同市の政策である「外資投資環境のさらなる最適化と外資誘致強化のための若干の措置外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に基づき、条件を満たす企業は3%の資金奨励(最高1億元)が上乗せされるため、合計で13%の優遇が受けられる。さらに、工場の設備更新(注)については「青島市における先進製造業の質の高い発展を加速するための政策措置外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」に基づき、技術改良を実施し、関連基準に適合した企業に対して設備投資額の12%(最高600万元)を補助する。

貿易面の支援では、輸出企業が貿易リスクに備えるための保険料を補助している。中小企業には最大40%(上限200万元)、新興国向けには最大50%(上限300万元)を支給する。説明によると、2025年1~10月には同市の輸出企業8,000社が同保険に加入し、1,720億元を輸出したとしている。

高副市長は今後の重点施策として、(1)東南アジア、南米、中東、アフリカなど新市場の開拓、(2)越境電子商取引(EC)の発展(既に41カ国・地域に114カ所の海外倉庫を設置)、(3)外資系企業製品の国内販売促進(商業施設に「外貿優品」専門コーナーを設置)や外資系企業の消費財買い替えへの参加奨励などを挙げた。

このほか、青島市は山東省では唯一、国家サービス業開放拡大総合モデル都市外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますに選ばれており(2025年4月16日記事参照)、金融、通信、医薬分野で外資系企業の参入が容易になると説明している。同市は国際化消費環境整備モデル都市外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにも選ばれており、同市の外資系企業にとって新たなビジネスチャンスが期待される。

写真 青島市の外資企業に関する現状説明の様子(ジェトロ撮影)

青島市の外資企業に関する現状説明の様子(ジェトロ撮影)

(注)中国政府は需要喚起のため、工場設備の更新や消費財買い替えを補助金によって促進している。詳細はビジネス短信特集「中国の設備更新と消費財買い替え推進政策の最新動向」を参照。

(皆川幸夫)

(中国)

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