米大手製薬イーライリリー、アラバマ州ハンツビルでの60億ドルの投資を発表
(米国)
アトランタ発
2025年12月17日
米国大手製薬のイーライリリー(本社:インディアナ州)は12月9日、アラバマ州ハンツビルに新設する製造施設に60億ドル以上を投資する計画を発表
した。同施設では、同社が2025年末までに世界各国の規制当局に申請を予定している経口の肥満症治療薬「オルフォルグリプロン」(注)などの製造を行う計画で、完成は2032年を見込み、450人の新たな雇用を創出する。
同社は2月26日、2025年中に米国内に新たに4カ所の製造施設の建設を開始し、治療分野全体にわたる米国内での医薬品生産を強化する計画を発表した(2025年3月6日記事参照)。9月には、バージニア州への50億ドルの投資
とテキサス州への65億ドルの投資
を発表しており、今回の発表で、計画されている4つの新施設のうち、3つの所在地が明らかになったかたちだ。残りの1カ所の所在地は2025年中に発表予定だ。
同社は、300以上の候補地の中からハンツビルを選んだ理由の1つとして、人材育成と研究を支援するハドソンアルファ・バイオテクノロジー研究所をあげた。寄付金とアラバマ州政府からの資金を活用して2008年に開所した同研究所は、非営利の研究機関で、がんや神経疾患、植物ゲノム解析などゲノミクスに関わる研究開発や人材育成を行っており、州政府やハンツビル市などと連携して、同社誘致に取り組んだとのことだ。
同社のデイビッド・A・リックス会長兼最高経営責任者(CEO)は、「今回の投資は医薬品原薬生産の米国内回帰を継続し、サプライチェーンの回復力強化と米国の患者への安定的な医薬品供給を実現する」と述べた。
ドナルド・トランプ大統領は国外に製造拠点のある製薬会社に対して圧力をかけており、2025年4月から、医薬品に関する1962年通商拡大法232条に基づく調査を開始している(2025年4月15日記事参照)。調査結果や措置内容は現時点で公表されていないが、トランプ大統領は9月にSNSへの投稿で「米国に医薬品製造工場を建設中の企業を除き、全てのブランド医薬品、特許医薬品に対し、100%の関税を課す」との意向を示しており、製薬大手各社が米国での薬価引き下げや製薬工場建設などに関する同政権との合意を相次いで発表している(2025年11月10日記事参照)。
(注)中外製薬が創製し、イーライリリーが全世界での開発権および販売権を保有している。
(檀野浩規)
(米国)
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