フランス、第3次国家低炭素戦略を公表
(フランス)
パリ発
2025年12月18日
フランス政府は12月12日、パリ協定採択から10周年を記念し、第3次国家低炭素戦略(SNBC)の改定案
(フランス語)を公表した。SNBCは、2050年のカーボンニュートラル達成に向け、全産業で温室効果ガス(GHG)排出削減と低炭素経済への移行を促す指針であり、5年ごとに改定される。
今回の改定版では、2030年までにGHG排出量(森林など吸収分を除く)を1990年比で半減する目標を掲げ、排出量上限を2024~2028年に年平均3億4,700万トン、2029~2033年に同2億6,500万トン、2034~2038年に1億9,200万トンに抑える。達成には年平均約5%の削減が必要で、2017~2023年の3%減からペースを加速する(注)。
部門別では、運輸、農業、製造業、建築、エネルギー、廃棄物、炭素吸収源の7つ分野で達成すべき目標を定めている。排出量の34%を占める運輸部門では、電動化を柱に2030年までに1990年比で26%削減を目指す。具体的には、乗用車新車販売の66%を電気自動車(EV)にして、EVの国内生産を年間200万台へ拡大。トラック・商用車も新車販売の50%を電動化する。
農業部門(排出量全体の20%)では、2030年までに1990年比で28%減を目指し、流通、外食、家庭における食品廃棄物の30%削減、有機農業比率21%への引き上げなどの目標を掲げる。
製造業(同17%)は、2030年までに68%削減、2050年までに97%削減を目指す。炭素回収量を2030年に400万~800万トン、2050年に2,000万~3,000万トンに拡大するほか、電気分解で製造した水素消費量(エネルギー用途・非エネルギー用途)を2030年に4.5テラワット時(TWh)、2050年に20 TWhに増やす。
建築部門(同15%)では、排出量60%削減を目指し、2030年までに石油ボイラー60%減、ガスボイラー20%減、住宅用ヒートポンプ880万台導入を目指す。エネルギー部門(10%)は、67%削減を目標に、電力および熱生産の脱炭素化を進める。
第3次SNBCの政府改定案は今後、気候高等評議会などの諮問機関の評議とオンラインでのパブリックコメントを経て、2026年春にデクレ(政令)で施行される予定だ。
(注)第2次SNBC(2020年3月策定)では、1990年のGHG排出量5億4,600万トンを基準に、排出量上限を2019~2023年に年平均4億2,200万トン、2024~2028年に3億5,900万トン、2029年~2033年に3億トンと定めていた(2021年6月7日付地域・分析レポート参照)。
(山崎あき)
(フランス)
ビジネス短信 7d41aa523d2d5c1a




閉じる
