ドイツ企業、モーリタニアでグリーン水素開発へ
(モーリタニア、ドイツ)
パリ発
2025年12月05日
モーリタニア政府とドイツのモーリング・エネルギー・ホールディング(注1)はモーリタニアの首都ヌアクショットで11月19日、グリーン水素およびグリーンアンモニアの大規模生産工場の開発に向けた戦略的枠組み協定を締結した。モハメド・オルド・ハレド・モーリタニア石油・エネルギー相と、同社のサシャ・メーリング創設者兼最高技術責任者が調印し、調印式にはドイツ連邦経済協力・開発省のクリストフ・ラウ・アフリカ局長率いるドイツの代表団が参加した。
「ナイラ(NAYRAH)」と名付けられたモーリング・エネルギーが進める産業用モジュール型Power-to-X(注2)プロジェクトは、産業クラスターとして段階的に開発され、約100メガワット(MW)の初期電解能力モジュールから始まり、最終的には電解能力1ギガワット(GW)に達する予定だ。年間最大14万トンのグリーン水素、または40万トンのグリーンアンモニアを生産し、欧州市場への輸出を視野に生産開始は2029年を予定している。この枠組み協定には、太陽光および風力による再生可能エネルギーの生産に世界最高水準の条件を備えるとされる北部ヌアディブ西方地域に約500平方キロメートルの敷地が割り当てられ、約1,600平方キロメートルまで拡張可能だという。グリーン分子の生産に加え、海水淡水化の統合コンセプトや、再生型農業副産物の利用なども開発戦略の一部となっている。
モーリタニアは、グリーン水素を生産する上で、世界で最も競争力のある国の1つとされ、アフリカ初の「グリーン水素法」を制定し、政府も積極的に外国からの投資誘致を進めている。2021年以降、外国企業によるグリーン水素およびグリーンアンモニア開発計画が複数策定されており(2025年9月25日付地域・分析レポート参照)、2025年9月8日には、エネルギー石油省が2件のグリーン水素・アンモニア生産に係る枠組み合意書を国際企業2社と締結した。まず、UEGグリーン・ハイドロゲン・デベロップメント・ホールディング(UEGの本社は香港)で、モーリタニアの北部と中央部の2拠点で年間約100万トンのグリーンアンモニアの生産を目指し、同時に還元鉄またはグリーンスチールの生産の可能性も検討している。
さらに、ポーランドのヒンフラ(HYNFRA PROSTA SPÓŁKA AKCYJNA)との契約では、推定年間生産能力12万トンのグリーンアンモニア生産プロジェクトの開発を目指している(両案件の詳細は添付資料表を参照)。
(注1)モーリング・エネルギー(Möhring Energie Holding)は、独立系プロジェクト開発会社で、EPC(設計・調達・建設)サービスの提供者。本社はドイツ・ディトマルシェンにあり、ハンブルク、キーウ、ラバト、香港にオフィスを構える。2021年以来、Power-to-X分野に集中的に取り組み、モロッコ、ブラジルでも大規模プロジェクトを開発中。
(注2)再生可能エネルギーを輸送、蓄積しやすい水素やアンモニアなどに変換する技術。
(渡辺智子)
(モーリタニア、ドイツ)
ビジネス短信 7b810fead3050d65




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