S&Pがモンゴルの信用格付けを「BB-」に引き上げ
(モンゴル)
北京発
2025年12月05日
国際信用格付け会社のS&Pグローバル・レーティング(S&P)は10月30日、モンゴルの長期ソブリン信用格付けを「B+」から「BB-」に1段階引き上げ、見通しを「安定的」と発表した。また、短期ソブリン信用格付けは「B」に据え置いた。
S&Pは、次の要因をモンゴルの信用格付け引き上げの理由として挙げている。
- モンゴルの財政状況が2022年以降、堅調な鉱業輸出に支えられ、大幅に改善した。
- 財政再建と力強い経済成長により、政府債務のGDP比が大幅に低下した。
- モンゴルの輸出は2025年に減速しているものの、継続的な鉱業活動と強力な公共投資に支えられ、今後2~3年間は持続的な経済成長が見込まれる。
- 長期格付けの安定的見通しは、モンゴルが今後2年間、力強い経済拡大を継続し、財政赤字を低く抑えるとみられる。
S&Pはまた、最近のモンゴル国内の政治情勢(注1)にもかかわらず、政策の実施は引き続き安定するとの予想を報告書で述べている。
モンゴル政府の発表によると、モンゴルの信用格付けがBB-に上昇するのは13年ぶりのことで、政府が過去5カ月間、財政・債務管理の分野で実施してきた政策・施策が、モンゴルの信用格付けの引き上げに貢献したとしている。また、ゴンボジャブ・ザンダンシャタル首相が7月の就任直後に2025年度予算を修正し、歳出を2兆2,000億トゥグルク(約968億円、1トゥグルク=約0.044円)削減することで財政赤字を削減した点を評価した。加えて、石炭輸出の促進と外貨流入の増加策を講じることで、モンゴル経済が安定し、外貨準備高は過去最高水準に達していると結論付けた(注2)。
モンゴル政府の発表では、前年秋の主要格付け各社によるモンゴルの信用格付けの引き上げ(2024年10月22日記事参照)に続き、さらに信用格付けが向上したことは、モンゴルの対外資金調達コストと金利の低下や銀行、金融機関、民間企業の信用力の向上につながり、モンゴルに対する外国投資家の信頼感が高まることが期待されると述べている。
なお、11月12日には、国会本会議で2026年度予算関連法案が可決された。連結国家予算の均衡歳入は31兆9,300億トゥグルク、総歳出は32兆9,800億トゥグルク、収支差額は1兆500億トゥグルクの赤字(名目GDPの1.0%)となった。
(注1)モンゴルでは前首相辞任(2025年7月7日記事参照)後、与党新党首の選出を巡って党内対立が激化し、前国会議長の解任・起訴などを経て、11月に新党首が選出されて国会議長に就任、閣僚人事も刷新されるなど政治的混乱が続いた。
(注2)2025年上半期までのモンゴル経済の動向については「モンゴル経済概況(2025年10月)」を参照。
(藤井一範)
(モンゴル)
ビジネス短信 6a23180bf2589a75




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