前首相の辞任を受け、ザンダンシャタル新内閣が発足

(モンゴル)

北京発

2025年07月07日

モンゴルにおいて、ロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ首相が辞任し、新首相にゴンボジャブ・ザンダンシャタル氏が就任、新内閣が6月17日に発足した。

今回の経緯をみると、モンゴルのロブサンナムスライ・オヨーンエルデネ前首相は5月28日、国会に自身に対する信任決議案を提出した。信任決議案採択に向け、6月2日の国会本会議での演説では、同内閣の成果として国富基金(注1)や電子政府の整備、1人当たりGDPの増加(直近の値は「2025年3月モンゴル経済概況PDFファイル(1.1MB)」参照)、ソブリン債の格付けの改善(2024年10月22日記事参照)、14のメガプロジェクトの開始・進展(2025年2月20日記事2025年2月25日記事参照)を挙げ、自身の親族の問題(注2)で内閣が辞職することは政治的不安定につながるとして国会議員に対して信任を訴えた。しかし、採決の結果、連立内閣を離脱することを発表していた民主党の欠席や、与党・人民党での造反もあり、全議員の過半数の承認を得られず、信任決議は否決され、内閣総辞職となった。

後任の首相にはゴンボジャブ・ザンダンシャタル大統領府長官が推薦され、6月13日の国会本会議において、出席した議員117人のうち108人の承認を得て第34代首相に就任した(注3)。

ザンダンシャタル新首相は、就任後の所信表明演説の中で、前政権の掲げた政策・事業を継続して実施することを表明した一方、一部の鉱物資源に過度に依存している現在のモンゴル経済が深刻な課題に直面しているとの認識を示し、そのために政府は無駄な支出を削減し、財政規律の原則を堅持するとした。また、経済の安定、国民所得と生活水準の向上、あらゆるレベルでの国家の強靭(きょうじん)性の構築、人材育成と就労支援、年金・社会保険基金改革を新政府の優先政策に掲げた。

ザンダンシャタル新首相は6月17日、国会に新閣僚名簿(添付資料表1参照)を提出し、国会の承認を受けた。民主党が連立から離脱したため、閣僚ポストは22から19に減少し、人民党から16人、フン党から2人、国民の勇気・緑の党から1人が入閣した。前内閣(2024年7月25日記事参照)からの留任は8人、閣内異動は2人、新入閣は9人で、うち女性閣僚は2人、日本に留学経験がある閣僚は4人となった。

(注1)鉱物資源収入を原資とするソブリン・ウェルス・ファンド。

(注2)現地報道では、「5月にオヨーンエルデネ首相の息子が婚約者に対して行ったプロポーズがぜいたくだったことから辞任要求デモが始まり、また、自身に批判的な記者に暴言を吐いたことから国民の怒りを買った」などと報じられている(「news.mn」5月20日)。

(注3)ザンダンシャタル氏は元国会議長で、2024年の総選挙で1区から立候補していたが落選し、その後、大統領府長官に就任していた。モンゴルでは、与党の推薦を経て大統領の発議により国会で承認されれば、国会議員でなくとも首相に就任することができる。ザンダンシャタル氏の略歴は添付資料表2参照。

(藤井一範)

(モンゴル)

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