ラオス経済、2025年は4.2%成長見込み、世界銀行が報告
(ラオス)
ビエンチャン発
2025年12月19日
世界銀行は12月12日、ラオスの経済分析レポート「ラオ・エコノミックモニター」を発表した。為替の安定、インフレ率の大幅な緩和(2025年10月時点で4.0%、注1)を背景に、2025年のマクロ経済は大きく改善し、観光、輸送、エネルギー、鉱業、製造業の拡大により、経済成長率は4.2%に達する見通しとした。前回予測(2025年5月)の3.5%から、0.7ポイント上方修正された。
2025年のラオス経済は底堅く推移し、サービス、エネルギー、製造業、農業が成長を牽引した。サービス業では、観光の回復や中国ラオス鉄道の輸送サービス強化が進み、工業では電力輸出、鉱物資源や製造業輸出が好調だった。一方で、労働者の量・質の不足が制約となっており、韓国への出稼ぎ労働者は、前年の2倍以上となる1万7,000人に達した。
輸出は、第1~第3四半期(1~9月)で前年同期比34%増と堅調に推移し、観光や輸送サービスの成長により、経常収支はGDP比8.1%の黒字を確保し、対外債務返済などによる資金流出を相殺した。さらに、外国直接投資は、第1~第3四半期で9億5,000万ドルに達し、強力な経常黒字により、国際収支全体は9月末までに7億3,500万ドルの黒字となった。これによって、外貨準備高は9月に前年同月比64%増の28億ドル(輸入3カ月分相当)まで回復したが、対外資金需要と比較すると、依然として低水準だ。
財政面では、付加価値税や所得税、法人税の増収により、2025年の財政収支はGDP比1.6%の黒字を見込む。しかし、多額の債務返済で資金需要は高く、債務繰り延べや外部資金への依存が続くと指摘した。11月にはラオス財務省がシンガポールで3億ドル(年利11.25%)のドル建て国債を発行し、国際債券市場へのアクセスを再開したことで、国内銀行への資金調達圧力は緩和されたものの、公共・公的保証債務(注2)はGDP比91.6%(2025年末見通し)と高水準で、財政の脆弱(ぜいじゃく)性は依然として課題が残る。
2026年は4%程度の成長を維持する見込みだが、米国の追加関税措置による製造業への影響に加え、輸出の8割以上を占める中国、タイ、ベトナムの成長鈍化がより重大なリスクになると分析した。財政収支は、公務員給与の引き上げで黒字幅が縮小してGDP比0.4%にとどまる見通しで、経常収支はGDP比3.6%の黒字を維持すると予測している。
世界銀行は、免税措置の縮小や燃料への物品税復活による歳入増、官民パートナーシップ制度の整備、債務再交渉の迅速化と債務管理の強化、銀行監督の強化、デジタル登記・許認可の導入、非関税措置の合理化など、ビジネス環境改善をさらに進める必要があると指摘した。
(注1)ラオスは2022年6月、新型コロナ禍による現地通貨キープの急落をきっかけに、インフレが加速した。2023年1月にはインフレ率が 40.3%に達し、その後も 20%超の高水準が続いた。しかし、2024年11月には 18.3%、2025年5月には 8.3%まで低下し(2025年9月5日記事参照)、さらに2025年10月には 4.0%と大幅に緩和した。
(注2)公共・公的保証債務とは、政府や公的機関が返済を保証した債務のこと。
(山田健一郎)
(ラオス)
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