ドイツ連立与党の競争力強化策、産業界は評価も課題指摘

(ドイツ)

ベルリン発

2025年12月04日

ドイツの連立与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)が11月13日の連立委員会を経て決定した、競争力強化に向けた5つの主要施策(2025年12月3日記事参照)に対して、ドイツ産業界は施策を歓迎し、競争力維持に寄与する点を評価する一方、財源や制度設計の明確化、実施スピードに懸念を示した。

ドイツ産業連盟(BDI)は、エネルギー集約型産業の競争力維持を目的とした産業用電力価格の導入を「企業の国際競争力の維持に役立つ」と評価。EUが連邦政府に産業用電力価格の設計において十分な裁量を認め、本制度ができるだけ多くのエネルギー集約型企業のコストを実際に引き下げられるようにすることが重要だと強調した。エネルギー・水道事業連合会(BDEW)は、水素対応発電所戦略は将来の水素市場にとって重要なシグナルと表明。新しいエネルギーインフラ基金の設立も適切かつ重要な要素であるとし、正しい方向に向かっていると評価した。航空業界では、ドイツ航空産業全国連盟(BDL)が、特に航空旅客税の引き下げを歓迎。航空業界の競争力を強化するための良い第一歩で、業界を超えた広範なプラス効果をもたらすとコメントした。

一方で、ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は、「新たな債務を積み上げても、問題は持続的に解決できない」と述べ、消費支出の増加ではなく、適切な優先順位、すなわち現状維持のための資金調達ではなく、将来への投資が必要と訴えた。また、BDIとDIHKはともに、産業用電力価格はつなぎ措置でしかないと指摘。補助金ではなく、より良い枠組みを整え、迅速に決定していく必要があるとした。

経済紙「ハンデルスブラット」は、目標価格とする5セント/キロワット時は、誤解を招く表現だと指摘。EUが定めた条件下では購入した電力の半分にしか適用できず、補助金の半分は企業の持続可能な変革に充てる必要があるため、短期的コスト削減には使用できない枠組みであり、欧州委員会が条件緩和に動く兆しもない、と報じた。本施策は企業の倒産防止にはならず「衰退を長引かせる」だけだとし、3年間で数十億ユーロ規模の財政負担を伴うと警鐘を鳴らす。加えて、送電網利用料引き下げ策も65億ユーロを投じながら、地域差が大きく恩恵は産業界に偏ると批判。効率化とコスト削減のため、再生可能エネルギー拡大と送電網拡張を連携させデジタル化を推進し、電力調達における柔軟性向上の必要性を強調した(11月14日付、26日付「ハンデルスブラット」紙)。

(中山裕貴)

(ドイツ)

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