第3四半期GDPは前年同期比2.1%増、政府支出の増加が貢献
(ウクライナ)
調査部欧州課
2025年12月22日
ウクライナ国家統計局の発表(12月10日)によると、同国の2025年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率(速報値)は前年同期比2.1%となった。前期比(季節調整済み)では0.8%だった。
ウクライナ国立銀行(NBU、中銀)の分析(12月15日)によると、財政支出の増加およびエネルギー供給状況の改善が経済成長の原動力となった。需要項目別では、政府最終消費支出が前年同期比で12.2%増、個人最終消費支出が6.7%増と国内需要が経済回復を主導した。総固定資本形成も11.5%増と、建設や農産物加工、防衛などへの投資が増加した。
産業別の成長率をみると、行政・防衛・強制社会保険(15.1%増)、建設業(31.5%増)、電気・ガス・熱供給業(6.7%増)、卸売・小売・車両修理業(2.6%)などが伸びた。一方で、農林水産業は収穫の遅れや家畜業の疫病などを背景に12.3%減となった。NBUは2025年のGDP成長率を1.9%程度、それ以降の数年は2~3%の成長を維持すると予測している。
インフレ率(消費者物価上昇率)は、2025年5月をピーク(前年同月比15.9%)に低下を続け、11月は9.3%と13カ月ぶりの1桁台となった。食品のほか、非食品・サービスで価格上昇が鈍化した。今後数カ月間は、農作物の新たな収穫やNBUの金融・為替政策により、インフレ率はさらに低下する、とNBUは予測する。
NBUは12月11日、政策金利を15.5%に維持することを決定した。通貨フリブニャ建て貯蓄商品の需要を支え、外国為替市場の安定を確保し、インフレ率を目標の5%台に収束させることを目指している。一方で、特に外部資金調達に関する不確実性など、インフレリスクが深刻化する場合には、金融引き締め措置を講じる姿勢だ。
ウクライナの外貨準備高は12月1日時点で547億5,600万ドルと、国際パートナーからの大規模な資金援助により過去最高額となった。将来の輸入の5.6カ月分に相当し、NBUは外国為替市場の安定を維持するのに十分な水準と評価している。一方で、2026年以降の外部資金調達については、国際パートナーとの交渉が続いており(2025年12月15日記事参照)、不確実な見通しであることから、インフレおよび経済発展のリスクになりうる、と指摘する。
(柴田紗英)
(ウクライナ)
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