トランプ米大統領、米国での「超小型車」の生産を承認と発言、軽自動車を含むかは不明

(米国)

ニューヨーク発

2025年12月09日

トランプ大統領は12月5日、SNS「トゥルース・ソーシャル」で、「米国内での『TINYCARS(超小型車)』の製造を承認する」と発言した。ガソリン、電動、ハイブリッドなど幅広い動力に対応した車両が「これらの車は、ごく近い将来、安全で、低価格で、燃費効率に優れる」とし、海外で成功している超小型車を米国でも生産すべきだと述べた。大統領は運輸省(DOT)、司法省(DOJ)、環境関連当局に規制緩和を指示した。

今回の発表で、「超小型車」が何を指すのかは不明だ。運輸省道路交通安全局(NHTSA)が所管する、米国で販売される車両や部品に適用される安全基準の「連邦自動車安全基準(FMVSS)(連邦規則49CFR Part571外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」では、乗用車、トラック、多目的乗用車、バス、二輪車、低速車(Low-Speed Vehicle:LSV)などの区分はあるものの、日本の軽自動車やマイクロカーに相当する独立したカテゴリーは規定されていない。その中でもLSVは、車両総重量が3,000ポンド(約1,361キログラム)以下と比較的小型ではあるが、最高時速が25マイル(約40キロメートル)未満の限定用途車両として規定されており、軽自動車のような高速道路走行も前提とした車両とは別枠だ。そのため、現在、米国内で軽自動車が公道走行を行うためには、通常の乗用車と同じFMVSSや、その他規制に適合させる必要がある。しかし、自動車事故による損害などを調査する米国道路安全保険協会(IIHS)によると、軽自動車のサイズを前提としていない基準への適合は難しく、米国で軽自動車は販売できていないのが現状だという。同協会の広報担当者は「何らかの規制の免除が認められない限り、多くの安全基準を変更しなければならない可能性がある。こうした変更がどれほど複雑で難しいか分からない」と述べた(ロードアンドトラック12月4日)。

今回のトランプ大統領の発言は、低価格車の普及に対する関心の高まりを示すもので、12月3日にNHTSAが発表した自動車燃費規制の規則案を含む「Freedom Means Affordable Cars(直訳:自由とは手頃な価格の車を意味する」構想にも通じる(2025年12月8日記事参照))。一方、制度面での変更は現時点で公表されておらず、今後、超小型車を米国市場で普及させるには、車両区分の新設や安全基準の見直しなど、構造的な規制対応が焦点になる可能性が高い。

(大原典子)

(米国)

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