米国テネシー州連邦下院特別選挙で共和党候補バン・エップス氏が勝利
(米国)
調査部米州課
2025年12月03日
米国テネシー州の連邦下院(第7区)特別選挙が12月2日行われ、共和党候補のマット・バン・エップス氏(同州一般サービス局長)が53.9%(開票率99%時点)の得票率で民主党候補のアフティン・ベーン氏(州下院議員)に勝利した(CNN12月2日)。
テネシー州では2024年の大統領選挙でドナルド・トランプ大統領が6割を超える得票率で勝利し、共和党の勢力が強いとされているが、直前の世論調査では接戦の様相を呈した(2025年11月27日記事参照)。
9月のバージニア州などの特別選挙や11月のニュージャージー州などの知事選、ニューヨーク市長選で民主党候補が勝利し、民主党への追い風が続いた(注1)。今回テネシー州は民主党候補が敗れたものの、全ての地区で2024年の大統領選挙と比較して民主党が共和党との得票率の差を縮める結果となった。
共和党はベーン氏を極左と批判し、民主党の勢いを阻止しようとしてきた。一方、民主党のスーパーPAC(注2)であるハウス・マジョリティ・PACは、この選挙戦で100万ドルをかけてテレビおよびデジタル広告を行ったという(「ワシントン・ポスト」紙12月2日)。
この選挙戦を担当した民主党ストラテジストは、「共和党は、本来なら楽勝だった選挙区で議席を失うのを阻止しようと全力を尽くしている」と語った(政治専門紙「ポリティコ」12月2日)。
今回の選挙結果を反映すると、下院の議席数は共和党220、民主党213となる。2026年11月の中間選挙前にも他の特別選挙が予定される。2026年1月31日に特別選挙の決戦投票が行われるテキサス州連邦下院第18区では、民主党候補2人(注3)で争われるため、民主党が議席を獲得する見込みだ。ニュージャージー州第11区の特別選挙は、2026年4月16日に実施の予定だ。
また、性犯罪で起訴され、独房で自殺したジェフリー・エプスタイン氏の文書公開を巡りトランプ氏と対立した共和党のマージョリー・テイラー・グリーン連邦下院議員(ジョージア州第14区)は、2026年1月に辞職することを発表しており、特別選挙は2026年3月に行われる見通しだ。MAGA(トランプ氏支持者)派だったグリーン氏の離反は、共和党内の亀裂の顕在化という見方もある。
ノースイースタン大学のコスタス・パナゴプロス政治学教授は、「(2026年11月の)中間選挙前に民主党が下院の多数派となる可能性は依然として低いが、全くあり得ないわけではない」と述べた。少なくとも何らかのかたちで、どちらも多数派を占めない一時的な過半数割れはありうる(「ニューズウィーク」誌11月24日)。
(注1)最近の選挙戦での民主党の勝利は、共和党を単に批判するだけでなく、民主党を肯定的に主張することに成功し、若年男性有権者に支持されていることによるという。一方、共和党は手頃な価格(アフォーダビリティ)を訴えるメッセージに軸足を移すことで、若年男性を含む無党派層の支持を取り戻すとしている(政治専門紙「ポリティコ」11月27日)。
(注2)選挙活動のため個人または団体から資金を調達する政治資金管理団体。
(注3)ともに民主党のアマンダ・エドワーズ氏(元ヒューストン市議会議員)とクリスチャン・メネフィー氏(ハリス郡法律事務弁護士)で決選投票が行われる。
(松岡智恵子)
(米国)
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