米USTR、中国の半導体に対する301条調査結果発表、2027年6月から追加関税
(米国、中国)
ニューヨーク発
2025年12月24日
米国通商代表部(USTR)は12月23日、1974年通商法301条に基づく、中国の半導体産業の調査結果に関する官報案
を公表した。正式には12月29日付で公示する。中国からの半導体などの輸入に対して、実質的に2027年6月から追加関税を課すことを決めつつも、具体的な税率の確定は避けた。
USTRは2024年12月、301条に基づいて、中国の半導体産業における支配的地位獲得を目的とした行為・政策・慣行に関する調査を開始した。調査内容には、中国の半導体が防衛、自動車、医療機器、航空宇宙、電気通信、発電・電力網などの重要産業向け製品の部品として利用される場合も含めた(2024年12月24日記事参照)。
調査の結果、USTRは、中国が国有企業などを通じて異常な支配力を半導体産業に行使することで、公正な競争や市場原理に反するかたちで自国産業を誘導できるなどとして、不合理だと結論付けた。市場原理に反する施策には、大規模かつ持続的な国家による財政支援、政府主導の基金、強制的な技術移転と知的財産権の侵害、規則上の不透明な優遇措置と差別、賃金を抑制する労働慣行などを挙げた。また中国による半導体産業の支配は、米国の半導体産業の中国依存を創出して米国経済全体に脆弱(ぜいじゃく)性を生み出し、経済安全保障上のリスクを抱えさせることで米国の商業に負担を強いている、とも指摘した。
これらを踏まえ、USTRは対抗措置が適切だと判断し、追加関税措置の発動を決めた。対象となるのは、シリコン、ディスク・ウエハーなどの形態の化学元素、ダイオード、トランジスタ、光電性半導体デバイス、集積回路などで、米国関税分類番号(HTSコード)8桁ベースで18品目となっている(注1)。ただし、追加関税率は、当該官報が有効となる12月23日から18カ月間は0%とし、2027年6月23日に引き上げる。具体的な追加関税率は、同日の30日前までに公表する。
なお、この新たな301条関税は、同じく301条に基づき2018年から中国原産品に課している追加関税に上乗せされる。今回指定された18品目に対する301条に基づく既存の追加関税率は、いずれも2025年1月以降50%となっている(2024年5月15日記事参照)。その他、トランプ政権は1962年通商拡大法232条に基づき、半導体に対する調査を行っている(2025年4月15日記事参照)が、結果はまだ公表されていない(注2)。
USTRは今回の301条関税についてプレスリリースなどの発表はしておらず、調査結果の報告書も公開していない。こうした状況について、米通商専門誌「インサイドUSトレード」(12月23日)は、10月に行われた米中首脳会談(2025年10月31日記事参照)を受けて両国の緊張関係が一時的に緩和している状況を反映しているとし、「USTRは現状の緊張緩和が崩れた際の将来的な選択肢を温存しつつ、波風を立てることを回避した」との識者のコメントを紹介している。
(注1)具体的なHTSコードは官報の8~9ページ参照。
(注2)半導体輸入に対する232条調査結果は、2025年内に大統領に報告されるとの指摘がある。大統領は報告書を受け取ってから90日以内に、対抗措置を行うか否かを判断する必要がある。232条に基づき追加関税が課される場合、これら301条に基づく追加関税に上乗せされる可能性がある。なお、報告書は公開されない場合もある。
(赤平大寿)
(米国、中国)
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