欧州委の自動車産業支援政策パッケージ、産業界からは期待外れの声も

(EU)

ブリュッセル発

2025年12月25日

欧州委員会が12月16日に発表した自動車産業支援政策パッケージ(2025年12月25日記事参照)について、欧州自動車産業界からは脱炭素化、競争力強化や技術中立性の担保に向けた「重要な第一歩」と歓迎する声と同時に、「内容が複雑で不充分」との声も上がった。

欧州自動車工業会(ACEA)は同日、電気自動車(EV)の普及が遅れている小型商用車(バン)や大型車の二酸化炭素(CO2)排出削減目標に関し改正する点やオムニバス法案を評価した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。一方で、2035年の排出削減目標の緩和に実効性を持たせるには、2030年の削減目標に関し、さらに実効性のある措置を講じる必要があると指摘した。また、ゼロエミッション車の普及にはインセンティブや充電インフラなどの条件の整備が必要と述べた。低炭素鉄鋼の使用により排出量を相殺可能とする施策に関し「域内産」を条件とすることや、社用車の販売におけるゼロ排出・低排出車(ZLEV)の割合目標を加盟国ごとに設定するなどの厳しい条件は逆効果の可能性があると指摘した。大型車についても、適切な需要喚起策の実施を要請した。

欧州自動車部品工業会(CLEPA)は同日、自動車業界が抱える喫緊の課題である域内生産や雇用維持の面では解決策になっていないと評価した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。例えば、2035年以降、新車の内燃機関搭載車の販売は容認に転じたが、販売継続の条件となるCO2排出量相殺手段は複雑でコストがかかるものであり、一部の企業のみが恩恵を受けると不満を示した。気候目標の実現に向け、真に技術中立の原則に立った現実的な道筋が示されなければ、社用車のグリーン化目標の設定や域内調達率の厳格化といった電動化推進策も効果を発揮せず、欧州自動車産業の国際競争力の低下を招くと断じ、さらなる雇用や競争力維持に係る施策について欧州委と対話を継続する意欲を示した。

バッテリー部門の団体リチャージは17日、「バッテリー産業の戦略的重要性が認識された」と政策パッケージを歓迎したが、バッテリーもEV同様、域外製品との激しい価格競争にさらされており、今回発表された施策以上の支援が必要とした(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。また、2035年のCO2排出削減目標の緩和に関し、バッテリー需要に不確実性が生じる可能性があるとの見解を示した。

(滝澤祥子)

(EU)

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