COP30合意に化石燃料廃止ロードマップ含まず、英政府が反対

(英国、ブラジル、世界)

ロンドン発

2025年12月03日

11月18日に公表された国連気候変動枠組み条約第30回締約国会議(COP30、注1)の第1次合意文書草案に化石燃料の段階的廃止に向けたロードマップが盛り込まれなかったことを受け、英国を含む約30カ国は議長国ブラジルに対し「脱化石燃料に関するロードマップを含まない合意は支持できない」と表明していた(2025年11月25日記事参照)。しかし、11月21日に公表された第2次合意文書草案にも、脱化石燃料のロードマップは盛り込まれなかった。

COP28(注2)では「化石燃料からの移行」が発表されたが、サウジアラビアを含む産油国が反対し、2024年のCOP29では決議に至らなかったことが背景にある。また、議長国ブラジルは今回、「化石燃料からの移行」をCOP30の公式議題から除外していた(11月18日付ガーディアン)。これを受け、英国、EU、および一部の中南米諸国が主導し、80カ国以上が化石燃料の段階的廃止に関するロードマップ策定を求める共同声明に署名していた。英国のエド・ミリバンド・エネルギー安全保障・ネットゼロ相は「化石燃料からの移行は、COP30の中心的課題であるべき」と強調し、本声明を支持していた。

11月22日の最終合意文書にもロードマップが含まれなかったことを受け、議長国ブラジルは上述のロードマップの盛り込みを支持していたコロンビアと連携し、今後1年間で化石燃料からの移行および森林破壊停止(注3)に関する独自のロードマップを策定すると発表した(注4)。

その他、COP30で英国が関与した主な取り組みは次のとおり。

  • 各国による気候変動適応資金を3倍に増額する(注5)ことで合意。ただし、満額への到達見込み時期は2030年から2035年に後ろ倒しされ、化石燃料廃止や排出削減計画の強化が盛り込まれなかったことから、ミリバンド氏はより野心的な内容が必要だったとした(11月22日付ガーディアン)。
  • 英国を含む11カ国が、化石燃料分野のメタン(CH4)排出削減に向けた計画(注6)を発表。
  • ブラジルと共同で肥料によるメタン排出など環境影響の低減に向けた行動を促す「肥料に関するベレン宣言」を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます
  • ブラジル、日本に加え、複数の都市や企業とともに国連環境計画(UNEP)の「食品廃棄物ブレイクスルー(注7)」に参画。
  • 英国を含む10カ国がブラジルの「土地劣化ネットゼロ達成の農業投資(RAIZ)」プログラム(注8)への支持を表明。
  • 英国スタートアップのティエラ・ビバAI(Tierra Viva AI)が生物多様性保全を目的としたカリ基金(注9)への初回拠出を実施。

(注1)2025年11月10~22日に、ブラジル・ベレン市で開催。

(注2)2023年にアラブ首長国連邦・ドバイで開催。

(注3)森林破壊の停止・復元に向けたロードマップ策定については、90カ国以上が支持したが、最終合意文書では必要性の認識にとどまり、義務化はされなかった。

(注4)策定されるロードマップは任意の取り組みで、国連枠組み外で実施される予定。

(注5)年間1,200億ドルへの増額。

(注6)モニタリング強化、2030年までの定期的なフレアリング(燃焼)とベント(放出)の廃止、生産国と消費国間の連携強化などを含む取り組み。

(注7)2030年までに食品廃棄物を半減し、メタン排出量を最大7%削減することを目指す取り組み。

(注8)政府と投資家との連携による劣化農地の回復を目的としたプログラム。

(注9)COP16の下で設立。企業や遺伝資源のデジタル配列情報(DSI)利用者が先住民や地域社会と利益を共有し、世界の生物多様性保護を支援する基金。

(バリオ純枝)

(英国、ブラジル、世界)

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