フィリピン農業省、動物用製品や乳製品の規制管轄を移管、申請手続き迅速化

(フィリピン)

マニラ発

2025年12月15日

フィリピン農業省(DA)は11月28日、動物用製品および乳製品の規制管轄を、フィリピン食品・医薬品局(FDA)からDA傘下の動物産業局(BAI)および国家酪農庁(NDA)へ移管すると発表した。この措置は、フィリピンの動物産業の強化、発展、食料安全保障および競争力の向上を目的とした共和国法第12308号(動物産業開発・競争力強化法)の施行に伴うもの。

BAIが管轄する動物用医薬品、動物用製品、生物製剤には、家畜、家禽(かきん)、ペット用動物、観賞魚類、実験動物、および外来動物に使用される物質または機器が含まれる。また、NDAが管轄する乳製品には、液状牛乳、脱脂粉乳、全粉乳、無糖練乳、バターミルク、ホエイ、コンデンスミルク、牛乳、クリーム(バター、チーズ、カードなどを含む)が含まれる。

2025年10月28日以前に提出された申請については、引き続きFDAが審査を行う。ただし、2026年4月25日までに承認されなかった案件は、BAIまたはNDAに引き継がれる。一方、2025年10月28日以降に提出された新規申請については、すべてBAIまたはNDAが最終決定を行う(注1)。なお、現在発行済みのFDA許可証について、新たな通知があるまで既存の手数料体系が引き続き適用され、許可証に明記された有効期限まで効力を有する。

DAによれば、2025年第3四半期の畜産部門における生産額は、前年同期比1.9%減の605億1,000万ペソ(約1,573億円、1ペソ=約2.6円)だった。アフリカ豚熱(ASF、注2)の影響が続いており、豚肉の生産量が1.4%減となったことが押し下げた。一方、家禽部門は10.6%増加し、759億6,000万ペソとなった。また、フィリピン統計庁(PSA)によると、2025年第3四半期の乳製品産業の生産量は前年同期比34.7%増の1万953トンに拡大した。

現地報道によると、フィリピン反レッドテープ機関(ARTA、注3)の発表では、2025年1~10月に最も多く苦情を受けた機関はFDA(599件)で、主に処理やサービス提供の遅延に関連していた。フィリピンの養鶏業者連合協会(UBRA)のエリアス・ホセ・インチョン理事長は、今回の移行により「FDAの過重な責任が軽減される」とコメントしており、手続きの迅速化が期待される。

(注1)2025年10月28日提出の申請への対応方法については扱いが不明確なため、個別に当局に確認が必要。

(注2)ASFは、物価高対策として、フィリピン政府が注力している分野の1つ(2025年5月19日記事参照)。現在はベトナムからの輸入ワクチンが認証を受けており、フィリピン国内で限定的な使用が認められている。

(注3)ARTAは2018年、共和国法11032号によって設立された大統領府直轄機関。政府機関のコンプライアンス監視、デジタル化の促進、過剰な官僚主義に関する国民からの苦情対応などを行っている。

(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)

(フィリピン)

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