4月CPI上昇率、前年同月比1.4%、コメなどの下落で2019年11月以来の低水準

(フィリピン)

マニラ発

2025年05月19日

フィリピン統計庁(PSA)は5月6日、4月の消費者物価指数(CPI)上昇率(インフレ率)は前年同月比1.4%で、前月の1.8%を下回ったと発表した(添付資料図参照)。中央銀行(BSP)の4月の予想インフレ率(1.3%~2.1%)の範囲内ではあるものの、2019年11月以来の低水準となった。コアインフレ率(注1)は前月と同様、2.2%だった。

1月から4月までの平均インフレ率は2.0%で、政府が定める2025年のインフレ率目標(注2)の上限に収まっている。PSAは4月のインフレ率低下に寄与した要因として、「食品、ノンアルコール飲料」「輸送」を挙げた。「食品、ノンアルコール飲料」は前月の2.2%から大きく低下し、0.9%だった。特にコメの価格は前月のマイナス7.7%からマイナス10.9%とさらに低下しており、そのほかにトウモロコシや果物、野菜、豆類、魚類、砂糖、菓子なども下落した。「輸送」は前月のマイナス1.1%からマイナス2.1%に低下した。

フィリピン経済企画開発省〔DEPDev、旧・国家経済開発庁(NEDA)〕のローズマリー・エディロン企画・政策グループ次官は「価格安定を保証し、食料価格を下げ、全てのフィリピン国民にとって生活必需品の入手が容易になるよう、『断固たる調整』を引き続き推進していく」と述べた。

ラルフ・レクト財務相は「インフレ率の低下が続いているが、政府は引き続き価格安定を維持し、国内市場で安価な食料供給を確保するとともに、食料以外のインフレ要因への対応に努める」と述べた。政府の施策には、アフリカ豚熱(ASF)関連の供給問題を踏まえた豚肉価格の上限厳格化や、フードターミナル社(FTI、注3)を通じた豚肉流通による小売価格と物流コストの削減、ASFワクチンの継続的な配布、魚介類の輸入量上限の引き上げなどが含まれる。

さらに、政府はマニラ首都圏(NCR)の輸入米の小売価格上限を1キロ当たり45ペソ(約117円、1ペソ=約2.6円)に維持しながら、選挙支援金配布禁止措置後には同20ペソのコメ供給プログラムを開始するとした。レクト財務相はさらに「政府は高騰するエネルギー価格の緩和のため、再生可能エネルギーや費用対効果の高いエネルギー源の促進も引き続き支援していく」と述べた。

(注1)相対的に価格変動が大きい特定の食品とエネルギーの項目を計算から除いたインフレ率のこと。

(注2)フィリピン政府は2025年のインフレ率目標を2.0%~4.0%と定めている。

(注3)フィリピン農業省傘下、国家食糧庁(NFA)の主要子会社に位置づけられる政府所有・管理法人(GOCC)の1つ。NFAの政策に基づき、コメや砂糖、豚肉などの主要な食料品の安定供給を目的とし、食品の加工・流通・保管・販売を行う。

(西岡絵里奈、アギラー・パールホープ)

(フィリピン)

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