米商務省、CHIPSプラス法に基づき韓国の重要鉱物製造企業に2億1,000万ドル拠出、戦争省(国防総省)も14億ドルの条件付き投資

(米国、韓国)

アトランタ発

2025年12月16日

米国商務省傘下の国立標準技術研究所(NIST)CHIPSプログラム局は12月15日、韓国のコリア・ジンクの子会社クルーシブル・メタルズに対して、テネシー州における先進製錬所および重要鉱物処理施設の建設を支援するため、2億1,000万ドルを交付すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同施設の総投資額は66億ドルと見込まれている。

新施設では、半導体や人工知能(AI)、量子コンピューティング、航空宇宙・防衛、自動車などの産業に不可欠な13種類の重要・戦略的鉱物(注1)および半導体グレードの硫酸(注2)などを年間54万トン生産する予定で、2029年を目標に段階的に稼働する見込みだ。さらに、コリア・ジンクは、2026年から米国政府および米国の顧客に対し、韓国国内で生産される10種類の重要戦略鉱物への優先アクセス権を付与することで合意した。

本プロジェクトでは、新施設建設や運転資金確保のため、約74億ドルが必要とされており、戦争省(国防総省)も14億ドルを条件付きで投じる。戦争省のスティーブ・ファインバーグ副長官は、「ドナルド・トランプ大統領は、米国の防衛と経済安全保障に不可欠な重要鉱物を優先的に扱うよう、行政機関に指示した」「戦争省による14億ドルの条件付き投資は、1970年代以来初となる米国の亜鉛製錬所および重要鉱物処理施設の建設を可能にし、50年におよぶ産業衰退の流れを逆転させる」と述べた。

テネシー州の発表によると、本プロジェクトでは、同州クラークスビルに米国本社機能と製造部門を統合した新施設を建設して420人を新たに雇用するほか、同州ゴードンズビルでは旧鉱山を再開し、320人を雇用する予定だ。

本プロジェクトは、亜鉛や鉛などを生産するナイスター(本社:オランダ)が運営するテネシー州クラークスビルの1次亜鉛製錬所をコリア・ジンクが買収して進める。コリア・ジンクが同地を選んだ理由として、米国で唯一の亜鉛製錬所として約50年にわたり操業してきた同施設には、亜鉛加工の専門知識を持つ数百人の高度な技能を持つ専門家が在籍していることが挙げられる。また、製錬コストの大部分を占める電力料金が同地域では比較的低廉で、処理料金面で大きなコスト優位性があるためだ。

レアアースなどの重要鉱物の安定確保は、サプライチェーンで重要な位置を占める中国との緊張関係が続く状況において、トランプ政権の重要課題の1つとなっており、同政権は、重要鉱物のサプライチェーン強靭(きょうじん)化を進めている。今回の事例以外にも、戦争省によるMPマテリアルズ、トリロジー・メタルズ、リチウム・アメリカズ、バルカン・エレメンツなどへの資金提供が発表されている(2025年12月4日記事参照)。

(注1)ガリウム、ビスマス、ゲルマニウム、インジウム、アンチモン、テルル、カドミウム、パラジウム、銅、銀、金、亜鉛、鉛の13種類。

(注2)半導体製造工程に不可欠な高純度な硫酸。

(檀野浩規)

(米国、韓国)

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