ティヌブ大統領が治安緊急事態を宣言、米国との合同会議も予定

(ナイジェリア、米国)

ラゴス発

2025年12月01日

ナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領は11月26日、全国に「治安緊急事態」を宣言し、軍や警察に対して追加徴兵し、テロリストや武装集団を掃討するよう命じた(外務省海外安全ホームページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます参照)。警察は少なくとも2万人を増員するように命じられている。

11月17日に、北西部のケッビ州で死傷者も伴う女学生の拉致事件が発生、その7日後に拉致された学生が無事に解放された。21日には、ナイジャ州で300人以上の拉致があり、クワラ州でも拉致事件が発生している。拉致された人々は救出されているものの、依然として行方不明者が多数出ている。大統領は、訓練した森林警備隊の投入や、要人警護任務から外れた警察官に再訓練を行い、治安の悪い地域への再配置で掃討作戦を行うとしている。特に北東部(ボルノ州、ヨベ州など)、北西部(ザムファラ州、ケッビ州など)、およびナイジャ州、クワラ州などでの武装集団による襲撃が相次いでいる。また、7月に設立した牧畜省を通じて、遊牧民と農民の衝突がないよう道筋をつけているとして、遊牧民に対しては(注)、不法所持の武器を放棄し、牧場経営に移行することを呼びかけている。

今回の「治安緊急事態」宣言に先駆けて、10月31日に、米国政府はナイジェリアを特別懸念国(CPC)に再指定し、ナイジェリアにおいてキリスト教徒に対する迫害があるとして非難してきた(2025年11月5日記事参照)。こうした背景から、ナイジェリアと米国の両国は、ナイジェリアの治安解決に向けた合同会議の準備を進めている。ナイジェリア側の合同会議メンバーは、ヌフ・リバド国家安全保障顧問のほか、外相、国防相、内務相、人道問題担当相、国防参謀総長、国家情報局長、警察総監らで構成される予定だ。ティヌブ大統領はこの合同会議について、米国側のカウンターパートと緊密に協力し、すべての分野にわたる合意の円滑な実施確保をするように求めている。

(注)フラニ族(Fulani)は、西アフリカ最大級の遊牧民で、ナイジェリアでは牛の放牧を生業として季節移動を行う。近年、農民との土地・水資源争いで衝突が頻発し、一部は武装化して治安問題の要因となっている。

(奥貴史)

(ナイジェリア、米国)

ビジネス短信 1885be1da6fe144e