米国、ナイジェリアを特別懸念国(CPC)に再指定

(ナイジェリア、米国)

ラゴス発

2025年11月05日

米国のドナルド・トランプ大統領は10月31日、ナイジェリアを「特別懸念国(CPC)」(注1)に再指定した。ナイジェリアが2020年12月に米国のCPCに指定された際に、当時のトランプ政権は、当時、何百万人ものナイジェリア国民が命の危険にさらされ、キリスト教徒の殺害に対しても行動を起こしていないのはナイジェリア政府の怠慢であると指摘すると表明していた。

その後、米国はバイデン政権になり、2021年にナイジェリアをCPCから除外したが、「Special Watch List」に指定しており、米国国際宗教自由委員会(USCIRF)は2021年から毎年、「キリスト教徒の迫害」を指摘し、CPC候補国に推薦していた。

今回のCPC再指定にあたって、2025年10月4日にライリー・ムーア米国下院議員(共和党)は、ナイジェリア北東部の国境の町キラワでのボコ・ハラム過激派による暴力的な占拠と、キリスト教徒の標的化が報じられていることに対し、強い非難を表明した。また、ナイジェリアでは、2025年だけで7,000人以上のキリスト教徒が殺害されており、2009年以降、ボコ・ハラムなど過激派により、1万9,000のキリスト教教会が攻撃をうけ、破壊されていると非難してきた。同議員は10月6日には、マルコ・ルビオ国務長官に対し、ナイジェリア全土で進行中のキリスト教徒に対する警戒すべき迫害を理由に、米国国務省に対し同国をCPCに再指定するよう求める書簡を送付していた。

今回の米国によるCPC再指定に対して、11月2日、ナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領は声明を発表。ナイジェリアが憲法で保障された宗教の自由を有する民主国家であるとしたうえで、2023年に自身の政権発足以降、安全保障上の課題に取り組んできたことに言及しつつ、政府は、すべての信仰を持つコミュニティの保護について理解と協力を深めるために、米国政府および国際社会と協力することに尽力すると述べている。

トランプ大統領の今回の決定に対して、米国下院歳出委員会は、トム・コール議員、マリオ・ディアス=バラート議員、ライリー・ムーア議員(注2)は、称賛するという旨の声明を発表している。

(注1)「CPC(Country of Particular Concern):特別懸念国」とは、米国の1998年国際宗教自由法に基づき、米国政府が「特に深刻な宗教の自由の侵害」に関与または容認していると認定した国。

(注2)トム・コール議員は下院歳出委員会委員長、マリオ・ディアス=バラート同副委員長、ライリー・ムーア立法府小委員会副委員長で、いずれも共和党。

(奥貴史)

(ナイジェリア、米国)

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