「サービスとしての水素」はコスト低減につながるか、ハンブルク水素展示会インタビュー

(ドイツ)

大阪本部海外ビジネス推進課

2025年12月01日

ドイツ・ハンブルクで10月21~23日に開催された水素技術の国際展示会「Hydrogen Technology World Expo 2025」で、ジェトロは広報ブースを設置した(2025年11月18日記事参照)。ジェトロでは同広報ブースを拠点に、同展示会出展者・来場者にインタビューを行った。

水素需要の拡大見通しが依然として不透明な中、採算性への懸念から多額の水素製造設備への投資がちゅうちょされており、その結果として産業現場への水素の普及が進まないというジレンマが課題として浮上している。こうした状況の緩和に取り組もうとする企業もいる。同展示会に来場した、再生可能エネルギー分野のデベロッパーであるエターナル・パワー(Eternal Power、本社:ドイツ・ハンブルク)の担当者は「HaaS(Hydrogen-as-a-Service)事業を通じてこのジレンマの解消を図り、水素供給の加速化を目指している」と語った。

HaaSモデルでは、水素供給事業者が水電解装置を保有せず、装置メーカーが所有権を保持することで、供給事業者の初期投資リスクを軽減する仕組みとなっている。一方で、水素の販売によって得られる収益から、装置の利用料を一定期間にわたり支払う契約を事前に締結することで、水電解装置メーカー側の収益も安定的に確保される構造となっている。同社は2025年6月、英国ITMパワーの子会社ハイドロパルスと戦略的パートナーシップを締結し、ハイドロパルスのHaaSモデルを活用して産業向けグリーン水素供給を加速する体制を構築。水電解装置の所有・運営をハイドロパルスが担い、プロジェクト開発や許認可などの調整をエターナル・パワーが担当する。

エターナル・パワーの担当者は、「HaaSモデルは、日本の水電解装置メーカーが欧州市場に参入するうえでも有力なアプローチとなり得る」と述べ、日本企業との協業の可能性について前向きな姿勢を示した。

なお、同展示会のジェトロ広報ブースに立ち寄った来場者からは、水電解装置や圧縮機、⾼圧ガス容器など日本の水素関連技術への関心の高さがうかがわれた。

2021年にドイツ・ブレーメンで始まった同展示会は、2024年から開催地をハンブルクに移した。また、2025年からは同じメッセ・ハンブルクの会場内でも、使用するホール数を増やすとともに、会期を2日間から3日間にのばしている。さらに、2024年まで「Hydrogen Technology EXPO Europe」だった展示会名を、「Hydrogen Technology World EXPO」と変更している。2026年は「パワーアップ」した2025年と同様の規模での開催が予定されている(会期は2026年10月20~22日)。

(太田真之、古川祐)

(ドイツ)

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