ハンブルク水素展示会、過去最大規模で開催、水素産業は停滞感強まる
(ドイツ)
ベルリン発
2025年11月18日
水素技術の国際展示会「Hydrogen Technology World Expo 2025」が10月21~23日、ドイツ・ハンブルクで開催された。2021年にブレーメンで初開催された同展示会は、欧州最大級の水素技術展示会として規模を拡大しており、ハンブルクでの開催は前年に続き2回目となる。
主催者によると、今回の来場者数は約2万人で、前年の約1万5,000人を上回り、過去最多を記録した。出展社数は約1,000社に達し、開催ホール数も7ホールに拡張された。水素の製造と貯蔵のソリューション、燃料電池技術、プラント技術、先進材料、部品、インフラシステムなど、バリューチェーン全体にわたる技術が紹介された。
展示会場の様子(ジェトロ撮影)
日本からは、共同出展を含めて約40の企業・団体が出展したほか、ジェトロも広報ブースを設置し、出展している日本企業をまとめたカタログを作成して、日本企業のPRを行った。自治体では神戸市が前年に続いてブースを設置したほか、福島県はジェトロのブース内でのパネル展示に加え、22日に同ブース内でセミナーを開催し、同県の取り組みを来場者に向けてアピールした。
ジェトロブース内での福島県のセミナー(ジェトロ撮影)
会場の雰囲気について「過去最大規模にもかかわらず、業界は待機モード」と報じたドイツの業界メディアは「多くのメーカーが再び苦境に陥っており、関心やプロジェクトはあるものの、全てが予想以上に時間がかかっている」という中規模燃料電池メーカーのコメントを紹介し、欧州の水素産業が停滞していると指摘した(「インヂュニア.de」10月29日)。
また、ドイツ連邦会計検査院は展示会後の10月28日に連邦政府の水素戦略の実施状況と課題を検証した報告書を公表した(プレスリリース
)。ドイツのグリーン水素の需要と供給はこれまでの期待を大きく下回っており、特に鉄鋼業界では、政府の支援策にもかかわらず、需要が十分に喚起されていないと指摘し、価格競争力が依然として乏しく、基幹ネットワーク整備計画も実態に対して過度に野心的とされた。恒久的な補助金依存による財政負担の懸念も示され、2045年までの気候中立達成と、ドイツの産業拠点としての競争力維持のため、水素戦略を根本的に見直す必要があると指摘した。
展示会の開会あいさつで、ドイツ水素・燃料電池協会(DWV)のベルント・ピチャック会長は「今後12カ月で、ドイツが水素分野で経済大国としての地位を維持できるかどうかが決まる」と述べ、次回2026年10月20~22日に開催される同展示会への期待も寄せた。
(太田真之、中山裕貴)
(ドイツ)
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