米FRBは反対複数も3回連続利下げ、2026年の利下げ見通しは1回
(米国)
ニューヨーク発
2025年12月11日
米国連邦準備制度理事会(FRB)は12月9~10日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利のフェデラル・ファンド(FF)金利の誘導目標を3.50~3.75%と0.25ポイント引き下げることを決定した(添付資料図参照)。今回の利下げを巡っては、全体的には比較的良好な結果となった雇用統計(2025年11月26日記事参照)やタカ派の地区連銀総裁による利下げに慎重なスタンスなどを受け、一時、シカゴマーカンタイル取引所(CME)が予想する利下げ見送り確率が約7割にまで達するなど、予想も大きく揺れていた。今回の決定に関しては、スティーブン・ミラン理事が0.50ポイントの利下げを、シカゴ連銀のオースティン・グールズビー総裁と、カンザスシティ連銀のジェフェリー・シュミッド総裁が利下げ見送りをそれぞれ主張し、反対票を投じた。また、2025年の投票権を持たない地区連銀総裁を含めると全12地区連銀総裁のうち、半数にあたる6人が今回の利下げに反対していることが明らかとなっており、これほど多くの異論がありながら利下げを行ったのは異例だ。
今回発表された声明文
の前回からの変更点は、(1)失業率に関する認識について、前月までの「依然として低い」との文言を削除、(2)今後の金融政策調整を検討するにあたって「適切な程度とタイミング」も考慮するとの文言を追加、(3)バランスシート政策に関して必要に応じて短期債の買い入れを開始するとの文言を追加、の3点だ。(2)については、2024年12月の声明文でも見られた表現で、その後6会合にわたり金利は維持された。FOMC後の記者会見では、パウエル議長から「9月以降の政策調整(利下げ)により、政策金利は中立金利の推計値の範囲内に収まり、今後のデータ、経済見通しの変化、リスクバランスに基づいて、政策金利の追加調整の程度と時期を決定するのに十分な体制が整った」として、今後しばらくの間、積極的な利下げの必要がないことを示唆する発言もなされている。
また、今回は、FOMC参加者による経済見通し
も示された(添付資料表参照)。金融政策の前提となる経済指標に関しては、成長率は、2025年が1.7%(前回1.6%)、2026年は2.3%(前回1.8%)、2027年は2.0%(前回1.9%)に上方修正された。もっとも、2026年の上方修正には2025年の政府閉鎖に伴う影響の反動増も含まれており、これを除くと2026年、2027年ともおおむね2%程度となる可能性が高く、額面上で見えるほどに勢いが増すわけではないことに留意が必要だ。
インフレ率は、2026年のPCEが2.4%(前回2.6%)、コアPCEが2.5%(前回2.6%)に下方修正されている。失業率は、2026年が4.4%(前回4.4%)と変わらず、2027年が4.2%(前回4.3%)と前回よりもわずかに低下した。
こうした経済見通しの下、2026年以降のFF金利の予測中央値は2026年が3.4%(予測中央値間の比較で利下げ1回分)、2027年が3.1%(同1回分)となっているが、2026年は利下げなしとしている者が7人、1回分の利下げを想定している者が4人、2回以上の利下げを想定している者が8人と、タカ派とハト派で見解が大きく割れている。
(加藤翔一)
(米国)
ビジネス短信 14a4e8035925f5db




閉じる
