9月の米雇用統計、全体としては比較的良好な内容

(米国)

ニューヨーク発

2025年11月26日

米国労働省は11月20日、9月の雇用統計を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。本統計は政府閉鎖により予定日の10月3日から後ろ倒しで公表されたもの。なお、10月の雇用統計は、非農業部門新規雇用者数などが含まれる事業所調査の結果のみが11月の雇用統計の結果と合わせて12月5日に公表される。失業率などが含まれる家計調査については、10月分は収集・公表されず、欠番となる。

就業者数(前月差25万1,000人増)、失業者数(同21万9,000人増)、労働参加率(62.4%、前月から0.1ポイント上昇)を踏まえた失業率は4.4%(注1)となった(添付資料表1、図1参照)。9月の失業率の上昇は、主として労働参加率の上昇が要因となっており、労働市場の減速が加速していることを示すわけではない。広義の失業率(注2)は8.0%(前月8.1%)、平均失業期間は24.1週(前月24.5週)と、いずれもわずかながら低下を示しており、こちらも労働市場の減速が加速していないという見方を支持するものとなっている。なお、失業率を年齢別にみると、16歳から24歳までの若年層が10.4%(前月から0.1ポイント低下)、25歳から54歳までのプライムエイジが3.7%(0.1ポイント上昇)、55歳以上が3.3%(0.4ポイント上昇)だった。

非農業部門の新規雇用者数は11万9,000人増と市場予想(5万3,000人増)を大きく上回った。もっとも、8月の数値は2万2,000人増から4,000人減に、7月の数値は7万9,000人増から7万2,000人増にそれぞれ下方改定されているため、3カ月移動平均では6万2,000人増にとどまっている。

内訳では、政府部門が2万2,000人増。地方政府における教育関連の雇用が増加した。民間部門(9万7,000人増)では、増加は教育・医療(5万9,000人増)のほか、娯楽・接客業(4万7,000人増)や小売業(1万4,000人増)など伸びを示したのは前月と同様の業種だ。

他方、製造業(6,000人減)や運輸・倉庫業(2万5,000人減)、対事業所サービス(2万人減)など減少となる業種も引き続き複数みられ、状況はまちまちだ(添付資料表2、図2参照)。

平均時給は36.7ドル(前月36.6ドル)で、前月比0.2%増(前月0.4%増)、前年同月比3.8%増(前月3.8%増)だった。インフレ圧力が継続する中でも、賃金の伸びは低下傾向にあるため、前月比でみると実質賃金(注3)は2025年に入ってからの9カ月中5カ月でマイナスとなっている。

賃金の伸びの弱さや新規雇用者数における業種の偏りなど一部に弱さの継続を示すシグナルは見えるものの、平均失業期間の短縮や新規雇用者数の伸びに表れているように、全体としては8月の雇用統計でみられたほどの弱さは感じられない。11月19日に公表された10月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、12月会合におけるスタンスをめぐり、参加者の間で見解が大きく割れていることが示されている。今回の雇用統計は次回会合までに発表される最後のものだが、この結果がさらなる利下げの根拠とするには明らかに力不足の内容となっている。

(注1)小数点第2位までの数値で比較すると、9月は4.44%と前月(4.32%)から0.12ポイントの上昇となる。

(注2)失業者に加え、「現在は仕事を探していないが、過去12カ月の間に求職活動を行った者」と「フルタイムを希望しているものの、非自発的にパートタイムを選択している者」を合わせて算定した数値。

(注3)ここでは平均時給の伸びからCPIの伸びを引いたもの。

(加藤翔一)

(米国)

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