EU、自動車設計・廃車(ELV)規則で政治合意、設計段階から循環性を促進

(EU)

ブリュッセル発

2025年12月26日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は12月12日、自動車設計・廃車(End-of-Life Vehicles:ELV)管理における持続可能性要件に関する規則案に関し、暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。本規則案は循環型経済行動計画の一環として、欧州委員会が2023年7月に提案。現行のELV指令と「自動車型式認証における再使用、再利用、再生の可能性(3R)に関する指令」を1つにまとめ、かつ加盟各国での国内法化が必要な指令から直接各国へ適用される規則とし(2023年7月20日記事参照)、車両の設計段階から部品、素材の3Rを促進する狙い。

主な政治合意の内容として、新車における再生材、特に再生プラスチックの利用に関する義務的な目標の導入がある。欧州委の提案は、施行から6年後までに再生プラスチックの利用率を25%以上とし、うち廃車由来を25%とする提案だった。EU理事会は交渉にあたり、2025年6月に再生可能プラスチックの利用率を3段階(施行後6年以内に15%、8年以内に20%、10年以内に25%)で進める立場で合意していた。欧州議会は9月、2段階(施行6年以内に20%、10年以内に25%)で進める立場で合意の採択をしていた。今回の政治合意では、施行6年以内に15%、10年以内に25%となり、うち廃車由来は、当所の欧州委提案の25%から20%に引き下げられた。プラスチックに限らず、施行1年以内に実施予定の実現可能性調査結果に基づき、順次、鉄、アルミニウム、マグネシウムや重要原材料の再生材利用の目標も導入される予定。

また、施行3年後からは、自動車メーカーに拡大生産者責任が課される。廃車の収集、処理費用などの負担を求め、処理前に特定部品や有害物質の除去の義務化などが含まれる見込み。この他、現行指令は乗用車・バンのみが対象となっているが、規則案はトラックなどの大型車や二輪車なども対象に含め、順次、適用対象としていく。

課題となっている、走行に適さない廃車がEU域外へ違法に輸出されている現状については、中古車か廃車かを判断する詳細の定めにも合意した。廃車と認定された場合は、認定処理施設で処理されなければならない。これにより、技術的に走行可能な中古車のみが輸出され、同時に域内で回収した廃車からの再生材を高める循環性を確保する。

規則案は今後、両機関による正式な承認を経て、EU官報に掲載される予定。

(薮中愛子)

(EU)

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