欧州委、循環性の高い自動車設計・生産・廃車に向けた規則案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年07月20日

欧州委員会は713日、自動車の車両設計から生産、廃車までの過程における循環性の向上に向けた自動車設計廃車(End-of-Life Vehicles:ELV管理における持続可能性要件に関する規則案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。現行の「ELV指令」と「自動車型式認証における再使用、再利用、再生の可能性(3R、注)に関する指令」を1つにまとめ規則化するもので、今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

現行法令の下で廃車回収や車両に含まれる有害物質の低減が進み、廃車からの原材料のリサイクル率は85%まで高まった。しかし、欧州委は、廃車から出る金属廃棄物は裁断されるのみで十分に分別、価値化されておらず、プラスチックや電子部品、複合材料のリサイクル率は非常に低いと指摘。適切な廃車回収が行われておらず、走行に適さない環境汚染源となる廃車がEU域外へ多く輸出されていることも課題に挙げた。

こうした背景から、同規則案は(1)部品の再利用や回収を促進する車両設計の推進、(2)新車生産に必要なプラスチックの25%以上の再生プラスチックの利用(うち廃車由来25%)、(3)廃車由来の再生材の増産、品質・価値の向上、(4)廃車回収の増加、(5)事業者間の廃車に係る公正なコスト負担配分などに重点を置く。

欧州では毎年、600万台以上が廃車となっている。自動車生産はプラスチック、鉄、アルミニウム、銅などを多く使用し、今後の電動化によりレアアースなどの重要原材料の需要も高まっている。そこで、自動車メーカーに対し、新車の型式認証の申請にあたり再生材の使用割合について報告義務を課すほか、新車には部品の安全な取り出し方や交換に関する情報を電子的手段で記録した「車両の持続可能性パスポート」を導入し、資源効率性を高める。廃車については、デジタル技術を活用した追跡や不適切な解体の厳罰化などによって回収を進める。

欧州委は、新規則は2035年までに1年当たり1,230万トンの二酸化炭素(CO2)の排出削減や540万トンの原材料の価値化を実現するほか、重要原材料の再利用の増加と域外への依存の低減、長期的にはエネルギー節約といった環境、経済面での効果が期待できると意気込む。廃棄物処理やリサイクル部門の中小企業を中心に、22,100人分の雇用創出が期待できるとした。電気自動車(EV)の普及に伴い、中小の解体事業者は労働者の新たな技能研修や設備投資の必要に迫られている。解体事業者支援の一環として、規則案では自動車メーカーに対しEU共通の要件を定めた拡大生産者責任を課し、解体事業者に必要な財政支援を行い、廃車由来の再生材の利用促進にともに貢献することを求める。

このほか、現行法令では適用対象ではないトラック、バスなどの大型車や一部の二輪車などは、現時点ではこうした車種の廃車の処理に関する包括的な情報がなく引き続き対象外としたが、将来的に対象とする意向だ。

(注)それぞれの英単語(ReusabilityRecyclabilityRecoverability)の頭文字を取って3Rと略される。

(滝澤祥子)

(EU)

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