海外デザイナー・バイヤー招聘で佐賀・鹿児島の工芸事業者21社に商談機会を提供
(日本、英国、フランス、ポルトガル、香港)
鹿児島発
2025年12月19日
ジェトロは10月27~30日、地域のニーズ、産業特性などに応じた海外販路開拓・拡大支援の「地域貢献プロジェクト」として、英国、フランス、ポルトガル、香港のデザイナー・バイヤー4人を佐賀県と鹿児島県に招聘(しょうへい)した。これらデザイナー・バイヤーは、国・県指定の伝統的工芸品(注)を含む、佐賀および鹿児島県内の工芸作家・事業者21社を訪問し、商談を行った。
本事業は、2025年1月に鹿児島県内で実施した工芸作家とデザイナーの交流プロジェクト(2025年2月20日記事参照)を踏まえて開催されたもので、同プロジェクトは、モダンデザインと日本の伝統的な工芸技術が融合した工芸品を生み出すことを目指していた。今回の事業は、鹿児島県を含む九州広域で、工芸作家と海外デザイナーによるコラボレーションや、工芸品の海外での認知拡大・販路開拓の促進を目的に行われた。ランドスケーププロダクツとコンランショップ・ジャパンの代表であり、1月のプロジェクトの立案者の1人である中原慎一郎氏がコーディネーターを務め、招聘の選定や商談のサポートなどを行った。
10月27、28日は、佐賀県内の有田、嬉野、武雄に拠点を置く陶磁器作家・事業者や、名尾手漉和紙、諸富家具の事業者の工房など8社を訪問した。10月29、30日は、鹿児島県内の薩摩焼や龍門司焼の窯元や、桜島の火山灰など地場の素材を生かした陶磁器、木工、金工、和紙、薩摩錫器の作家・事業者など8社の工房を訪問した。工房訪問に加えて、10月29日には、鹿児島市内の鹿児島城(鶴丸城)本丸跡に建つ、「鹿児島県歴史・美術センター黎明館
」内の「CHIN JUKAN POTTERY 喫茶室
」において展示商談会を開催した。屋久島や日置市、南九州市、いちき串木野市、薩摩川内市から、屋久島の木材を生かした木工、薩摩焼、川辺仏壇、大漁旗、竹製品の作家・事業者5社が参加した。
工芸作家・事業者からは、海外デザイナー・バイヤーの訪問や対面商談を通してデザインに関する意見交換ができた、海外販路開拓に向けた新たなつながりを構築できたといったコメントがあった。一方で、招聘されたデザイナー・バイヤーからは、工芸作家・事業者の工房を訪問し、実際に工芸品を手に取ることで、職人がものづくりに込めた思いや技術、工夫などを深く知ることができたという意見が寄せられた。コーディネーターの中原氏は、「海外のデザイナーやバイヤーは、特に天然の素材や、環境負荷への配慮などサステナビリティの概念に根差したものづくりに対する関心が高く、そのようなものづくりに取り組む事業者にとってはアピールポイントとなり得る」と語った。
佐賀県内の工芸作家・事業者訪問の様子(ジェトロ撮影)
鹿児島県内の工芸作家・事業者訪問、展示商談会の様子(ジェトロ撮影)
(注)佐賀県の「国指定伝統的工芸品」は、伊万里・有田焼、唐津焼の2つ。「佐賀県指定伝統的地場産品」「その他の伝統工芸品」として、諸富家具・建具、名尾手漉和紙、武雄焼などがある。鹿児島県の「国指定伝統的工芸品」は、本場大島紬、川辺仏壇、薩摩焼の3つ。「県指定伝統的工芸品」として、大漁旗、竹製品、薩摩錫器など32品目がある。
(山田凪紗、田中佳恵)
(日本、英国、フランス、ポルトガル、香港)
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