中国・美団傘下の「キータ」がブラジルで事業開始、競争激化の様相

(ブラジル、中国)

サンパウロ発

2025年12月04日

中国のデリバリーサービス大手美団傘下のフード配達アプリ「キータ」は12月1日、ブラジル・サンパウロ市を中心とする大サンパウロ都市圏においてフードデリバリー事業を開始した(注1)。美団は5月12日、中国を公式訪問したルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領との面談で、今後5年間で10億ドルをブラジルに投資する進出計画を発表している。

現地金融専門誌「インベスト・ニュース」(12月1日付)によると、キータのトニー・チウ最高経営責任者(CEO)は記者会見で「ブラジルはアジア圏以外で最もポテンシャルの高い市場であり、サンパウロはその入り口となる」と述べた。同誌によれば、大サンパウロ都市圏内で、既に約2万7,000店舗、9万8,200人の配達員がキータに登録済みという。

2025年は「デリバリー戦争」と呼ばれるほど、フードデリバリー事業に関する投資発表が相次いだ。コロンビア発のラピ(Rappi)は5月5日、今後3年間で14億レアル(約406億円、1レアル=約29円)の投資を発表した。中国の配車サービス大手・滴滴出行(DiDi)傘下の配車アプリ「99」は9月15日、2026年までに20億レアルを、同社のフードデリバリー事業「99Food」に投資する計画を明らかにした(2025年9月30日記事参照)。これに対し、国内最大手のアイフージ(iFood)は8月5日、2026年3月までに170億レアルを投資し、顧客数8,000万人への到達とサービスエコシステムの強化を目指すと発表した。さらに、米国配車大手ウーバー(Uber)とのアプリ相互連携も進めるなど、巨額投資とアライアンスの両面で防戦姿勢を強めている。

競争の激化に伴い、公正な市場環境を巡る動きも活発化している。ブラジル・レストラン・バー協会(ABRASEL)は9月25日、iFoodが決済システムや物流で支配的地位を乱用し「閉鎖的なエコシステム」を構築しているとして、経済擁護管理委員会(CADE)に調査を申し立てた(注2)。CADEはサンパウロ市など主要都市での監視を強化しており、新規参入による市場の再編と規制動向が注目される。

(注1)ブラジルでの事業は2025年10月30日、サンパウロ州サントス市と同州サンビセンテ市で実証試験を開始済み。

(注2)経済擁護管理委員会(CADE)は、日本の公正取引委員会に相当するブラジル法務省傘下の独占禁止法の運用機関。なお、ABRASEL公式サイト(9月29日付)によると、iFoodは国内デリバリー市場で80%以上のシェアを占める。

(エルナニ・オダ、中山貴弘)

(ブラジル、中国)

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