南ア政府、中期予算政策を発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2025年11月17日

南アフリカ共和国のエノック・ゴドングワナ財務相は11月12日、2025年中期予算政策(MTBPS)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を議会に提出した。財政健全化、マクロ経済の安定、構造改革、国家能力構築、インフラ投資を優先する一方で、貿易摩擦や地政学的不確実性、サプライチェーンの混乱といった厳しい世界情勢への認識も示している。

経済予測については、慎重な見通しを反映しており、2025年の実質GDP成長率は、5月の予算発表時の1.4%から1.2%に下方修正した。これは、世界需要の低迷と上半期の国内成長の鈍化によるものだ。一方、2026年から2028年の平均成長率は、電力と物流分野での改革を背景に、1.8%と見込んでいる。また、ゴドングワナ財務相は新たなインフレ目標の中間値について、今後2年間に対して4.5%から3%に引き下げ、1%の許容範囲を設定すると発表した。この新たな目標は、従来の3~6%のインフレ目標を2~4%に変更するもので、南アの国際競争力を向上させることを企図している。「インフレ目標値を引き下げることで、インフレ率とインフレ期待が低下し、長期的な低金利の余地が生まれ、家計支出と投資を支え、経済成長と雇用創出を促進する」とMTBPSに示した。

MTBPSでは、財政再建が引き続き最重要課題とした。基礎的財政収支の黒字は2025/2026年度の685億ランド(約6,165億円、1ランド=約9円)から、2028/2029年度には2,240億ランドに増加し、財政赤字は縮小する見込みだ。なお、政府債務残高は2025年にGDP比77.9%となり、2008年の世界金融危機以来、公的債務がGDP比で増加しない初めてのケースとなる見込みだ。

南ア発祥の専門銀行・資産管理会社インベステックのチーフエコノミスト、アナベル・ビショップ氏は、予算案を肯定的に評価しつつも、「中期的には債務残高の上昇が依然として大きな懸念事項だ。総債務は2033/2034年度まで新興市場経済における持続可能な債務比率の上限とされるGDP比60%を超える67.9%で推移すると予測されている。南アの財政再建は遅れている」と述べた。

(トラスト・ムブトゥンガイ)

(南アフリカ共和国)

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