欧州委、合金鉄のセーフガード措置を発動、ノルウェーとアイスランドにも適用
(EU、ノルウェー、アイスランド)
ブリュッセル発
2025年11月21日
欧州委員会は11月18日、フェロマンガンなど合金鉄4品目を対象とするセーフガード措置を発動した(プレスリリース
)。国別の関税割り当て(TRQ)を設定して輸入量を制限する。超過分について、価格が製品ごとに定める基準価格を下回る場合、運賃保険料込み(CIF)価格と基準価格の差額を従価税として賦課する。全てのEU域外国を対象とし、2028年11月17日までの3年間実施する。
同日付のEU官報に掲載された実施規則
によると、欧州委は2024年12月19日、フランス、ポーランド、スロバキアの3カ国の要請(スペインは支持のみ)により、合金鉄6品目に対するセーフガード調査を開始した。
世界の合金鉄市場は、2023年は消費約2,760万トンに対し、生産能力は推定約4,600万トンと過剰生産に陥っており、価格は下落傾向にある。輸出国の生産者にとって、EUは市場規模(全世界の21%を消費)と高い価格水準が魅力的で、他国の輸入制限措置の影響も受け、EUの輸入量は2019年から2024年にかけて17%増加した。一方、同期間の域内生産はほぼ半減し、設備稼働率は56%から35%に低下した。輸入量の増加に伴い、域内生産者の販売価格に圧力がかかった(2021年には輸入製品の価格に比べ17%高い価格だった)。域内消費が縮小する中、低価格の輸入製品に押され、域内生産者の市場シェアは2019年から2024年の期間で38%から24%に低下した。合金鉄は自動車、航空、建設、電子産業で使用される高品質の鉄鋼製品に不可欠であり、同部門の活性化はEUの利益であるとし、セーフガード措置の発動に踏み切った。
欧州合金鉄生産者協会(EUROALLIAGES)は同日、措置の発動を歓迎し、同部門だけでなく、EUの産業・技術・防衛分野における主権確立の転換点になると述べた。しかし、域内生産市場のシェアが下がり続けている金属シリコンとカルシウムシリコンが措置の対象外となったことに懸念を示した。特に金属シリコンは軍事および経済安全保障面で重要度が高く、同協会は欧州委に対し効果的な保護策を早急に策定するよう要請した。また、欧州経済領域(EEA)加盟国のノルウェーとアイスランドが対象国に含まれたことに遺憾の意を示したが、欧州委が両国と3カ月ごとに協議を行い、欧州全体のサプライチェーン強化に向け、措置の影響を評価するとしたことを歓迎し、EEA加盟国との協力深化を要請した。
ノルウェーとアイスランド産の合金鉄は、価格はEU製品と同水準で、他の原産国の輸入品より高いものの、2024年はEUの合金鉄の輸入量全体の47.4%を占め、域内生産者にとって競争圧力となっていると判断された。EEA加盟国がEUの通商防衛措置の対象となるのは極めて異例であり、ノルウェー政府は18日付の声明
でEUに強く反発し、同国企業と対EU輸出への影響把握に努めると同時に、20日のEEA理事会でEUと協議するとした。
(滝澤祥子)
(EU、ノルウェー、アイスランド)
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