ディープテック戦略、量子コンピューティングなどが次の重点分野
(シンガポール)
シンガポール発
2025年11月10日
シンガポールのガン・キムヨン副首相兼貿易産業相は10月29日、同国のイノベーション戦略の次なるフロンティアがディープテック(注)となると強調した。重点分野として、量子コンピューティングを筆頭に、環境テックと、自動運転やロボットなど物理的な形を持つ「エンボディドAI(人工知能)(Embodied AI)」を挙げた。シンガポール企業庁が主催するディープテック分野の大型イノベーションイベント「シンガポール・ウイーク・オブ・イノベーション・アンド・テクノロジー(SWITCH)2025」での開幕演説で、発表した。
SWITCHの開催期間中(10月29~31日)、量子コンピューティング分野における官民の新たな取り組みが相次いで発表された。量子コンピューティング分野に特化したスイスのベンチャーキャピタル会社、QAIベンチャーズは10月29日、創立間もない同分野のスタートアップを対象とした5カ月間の「QAIベンチャーズ・アクセラレータープログラム(シンガポール)」の公募開始を発表した。公募締め切りは2026年3月2日で、同年半ばからプログラムが開始する。
また、シンガポールの農畜産会社ジャプファ(Japfa)は10月31日、「AI・量子コンピューティング・センター・オブ・エクセレンス(CoE)」の設立を発表した。同CoEでは、地場スタートアップ、エンジェルQ(AngelQ)と共同で、量子コンピューティング技術を活用した生産の最適化に取り組む。また、地元教育機関と連携し、AIを用いた品質検査や人材育成を行う。
さらに、シンガポール国家量子事務局(NQO)とスウェーデン量子イノベーション・プラットフォーム(QSIP)と同日、両国の大学や研究機関の量子コンピューティング分野における協力覚書(MOU)に署名した。
SWITCHは2016年から毎年開催されており、2025年で10年目を迎えた。今回のイベントには、約100カ国から約400ものスタートアップや大学、団体が出展。日本からはスタートアップ37社が参加した。
ジャパンパビリオンで記念撮影に応じるガン・キムヨン副首相兼貿易産業相(右から3人目)と石川浩司駐シンガポール日本大使(左から4人目)(ジェトロ撮影、10月29日)
(注)ディープテックとは、革新的な科学技術を用いて、世界的な課題を解決する技術を指す。
(本田智津絵)
(シンガポール)
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