川崎市で「水素の未来」セミナー、欧州企業4社の水素ビジネス最前線
(日本、英国、オランダ、ギリシャ)
調査部欧州課
2025年11月19日
川崎市とジェトロは11月12日、第18回川崎国際環境技術展
でセミナー「川崎でつながる水素の未来」を開催した。同市が川崎水素戦略
を策定し、水素社会の実現を目指していることを受け、水素分野の将来的な協業の可能性を視野に、欧州の水素関連企業4社を招聘(しょうへい)し、各社は事業概要などについてプレゼンテーションを行った。
石油・化学タンクで蓄積したノウハウを基に、次世代エネルギーに係る物流・貯蔵インフラを手掛けるロイヤル・ボパック(本社:オランダ)のアルバート・イターソン国際事業開発マネジャーは同社のビジネス領域と展望を説明した。エネルギーの製造には関与せずに、輸出入の貯蔵インフラに注力しており、アンモニア貯蔵では既に20年の経験を持っており、水素貯蔵についても事業を開始して今後中核と成り得るとした。
液化水素(LH2)や二酸化炭素(CO2)の中流分野でソリューションを提供するエコログ(本社:ギリシャ)の吉川晴朗LH2ミッドストリーム・ディレクターは、オランダ・アムステルダムで進行中のLH2海上輸送・貯蔵・荷役・再ガス化プロジェクトを解説した。また、海上輸送を担う会社としてターミナルを標準化し、グローバルスタンダードな水素社会を実現することの重要性を示唆した。
水素やCO2回収・貯留(CCS)分野のプロジェクト開発やコンサルティングを行うプログレッシブ・エナジー(本社:英国)のダンカン・バートウィッスル・ハイネット・アライアンス・マネジャーは、同社が関与する2つのCCSクラスターを紹介した。イングランド北西部からウェールズ北部にまたがり、同社がプロジェクトリーダーを務めるハイネット(2023年3月7日調査レポート参照)と、イングランド北西部のセメント・石灰産業からCO2を回収するピーク・クラスター(2025年7月9日記事参照)を概説した。また、ハイネットについて設備メーカーなどを対象としたサプライチェーンサミットを2026年夏に英国で開催する予定とし、関心ある企業の参加を呼びかけた。
水素、メタン、メタノールなどさまざまな低炭素燃料の製造技術を手掛けるジョンソン・マッセイ(本社:英国)のジョン・ブライトリング事業開発マネジャーは、同社のブルー水素製造技術LCHを紹介し、効率性に優れてより少量のLNGからブルー水素(注)の製造が可能なことに加え、CO2回収率にも優れるとして、経済性と環境性の両面から優位性を強調した。
セミナーの様子(ジェトロ撮影)
(注)CCSと組み合わせて化石燃料から製造する水素。
(齊藤圭)
(日本、英国、オランダ、ギリシャ)
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