バングラデシュ労働法改正、労働者の権利保護を強化
(バングラデシュ)
ダッカ発
2025年11月28日
バングラデシュ政府は11月17日、2006年労働法の改正
を公表した。暫定政権が国家運営を行っているため、法律(act)ではなく命令(ordinance)として扱われており、2026年2月に実施予定の総選挙後に開かれる国会での法制化が期待される。
改正された労働法では、労働者の定義が拡大され、日雇い労働者や臨時労働者、デジタルプラットフォームを通じて働く者も労働者に該当するようになった。また、家事使用人が労働法の適用対象となり、園芸、養殖、畜産業の従事者も農業労働者に含まれることになった。
労働組合の結成要件も引き下げられた。従業員が20~300人の工場では、労働者が20人集まれば労働組合を結成できるようになった。従業員が301~500人の工場では40人、501~1,500人の工場では100人、1,501~3,000人の工場では300人、3,000人超の工場では400人が同意すれば結成可能となる。旧法で労働組合を登録するためには、従業員の3割以上の同意が必要だった。
産業界は、改正案の承認前からこれに反対し、労働組合結成要件の引き下げが工場内の混乱や不安を高め、外部からの干渉を招く恐れがあると主張していた。バングラデシュの大手縫製メーカーの幹部はジェトロの取材に対し、「労務管理が会社経営において最大の課題となっている。特に、人件費の上昇と労働組合要件の緩和に頭を悩ませている。勤務経験のない人物が在籍証明書を偽造したり、外部の批判的な人物が在籍者に働きかけて労働組合を組成したりする恐れが出てきた」と述べ、不安な気持ちを明らかにした。しかし、今回の改正では労働者の権利保護が優先された。
最低賃金の見直し周期は、これまでの5年ごとから3年ごとに変更された。これにより、労働者の賃金がより頻繁に引き上げられる。産前産後休暇は16週間のままで基本的権利に変更はなかったが、妊娠中または授乳中の労働者を有害化学物質、放射線、高温、重労働、感染リスクなどを伴う危険な業務に配置することは禁じられた。労働者のブラックリストの作成も禁止となり、雇用主は人員削減、解雇、退職などにより雇用関係を終えた人物のリストやデータベースを作成してはならないことになった。
ILOは11月18日、改正を受けて「労働者の権利の強化と労働条件の改善に向けたバングラデシュ暫定政権の強い決意を反映するものであり、公正な労働市場の育成、新たな投資の誘致、国際市場へのアクセス拡大に寄与するだろう」と評価した。在バングラデシュ米国大使館も「暫定政権による国際労働基準推進の取り組みを歓迎する」とのコメントを出した。
(片岡一生)
(バングラデシュ)
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