米主要港、9月の小売業者向け輸入コンテナ量は前月比9.3%減、今後も関税などの影響で輸入量減少加速の見通し

(米国)

ニューヨーク発

2025年11月13日

全米小売業協会(NRF)と物流コンサルタント会社ハケット・アソシエイツが発表した「グローバル・ポート・トラッカー報告」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(11月7日)によると、9月の米国小売業者向けの主要輸入港(注1)の輸入コンテナ量は前月比9.3%減、前年同月比7.4%減の210 万TEU(1TEUは20フィートコンテナ換算、添付資料図参照)となった(注2)。

今後の見通しでは、10月は前年同月比11.5%減の199万TEU、11月は同14.4%減の185万TEU、12月は17.9%減の175万TEUと、貨物量は着実に減少すると見込まれている。また、12月は2023年3月以来の低水準になる見通しだ。これには、関税の影響による総量の減少も影響しているが、前年比での減少率は、2025年のピークシーズンが早期に訪れたことや、2024年後半の輸入が米東海岸とメキシコ海岸の港湾スト(2024年10月7日記事参照)の懸念によって増加していたことも影響している。2025年通年での輸入量は前年比で2.3%減少すると予想されている。

NRFのサプライチェーン・税関担当副会長のジョナサン・ゴールド氏は「2025年の大半は、関税がインフレとサプライチェーンに与える影響を懸念したが、ホリデーシーズンを迎え、緩和策が功を奏したようだ」「小売業者が、関税引き上げが低水準または遅延している時期に輸入を前倒しするなどの措置を講じたことや、自社でコストを吸収したおかげで、店頭の品ぞろえは充実しており、価格への影響は最小限に抑えられている」と述べた。

米国調査会社デカルトによると、10月の米国コンテナ輸入量は前月比0.1%減の230万6,687TEUで、通常は貿易活動のピークを示す240万~260万TEUの範囲を下回った。過去10年間で10月としては2度目の前月比減少を記録し、輸入業者の慎重姿勢を示した。特に中国から米国向けの輸入量は減少傾向にあり、10月には前月比5.4%増の80万3,901TEUに増加したものの、前年同月比では16.3%の大幅減となった。主要品目をみると、輸入量で最大となる家具・寝具(HSコード94)は前年同月比13.6%減だった。玩具・スポーツ用品(HS95)30.4%減、電気機械(HS85)17.2%減、機械類(HS84)14.0%減で、米国への輸出が伸び悩んでいることを示した。

テクノロジー企業ビジョンは、2025年の輸入減少は単なる統計的な差異ではなく、米国のサプライチェーンにとって根本的に異なる事業環境の出現を示唆する。関税政策、住宅市場の動向、消費者心理の変化、小売業の構造変化が相まって、戦術的ではなく戦略的な対応が求められる状況になっていると分析する。

(注1)主要輸入港は、米国西海岸のロサンゼルス/ロングビーチ、オークランド、シアトル、タコマ、東海岸のニューヨーク/ニュージャージー、バージニア、チャールストン、サバンナ、エバーグレーズ、マイアミ、ジャクソンビル、メキシコ湾岸のヒューストンの各港を指す。

(注2)発表されている貨物量のTEUと前年同月比の数値は端数処理の関係で一致しない場合がある。

(樫葉さくら)

(米国)

ビジネス短信 ce1ffc82d3517358