サムスン電機の現地子会社、CREATE MORE法初となる恩典適用へ

(フィリピン、韓国)

調査部アジア大洋州課

2025年11月12日

フィリピン大統領府は11月2日、サムスン電機フィリピン(SEMPHIL)による507億ペソ(約1,318億円、1ペソ=約2.6円)の投資に対し、「CREATE MORE法(共和国法第12066号)」(注)に基づく税制優遇措置を付与すると発表した。同法に基づく優遇措置の適用は今回が初めてとなる。フェルディナンド・マルコス大統領は、第32回APEC首脳会議に合わせて訪韓した際に、同社幹部と会談し、投資に関する合意に至った。

SEMPHILは、韓国サムスングループの電子部品メーカーのサムスン電機(SAMSUNG ELECTRO-MECHANICS、SEMCO)のフィリピン現地子会社で、フィリピン経済特区庁(PEZA)の認可を受け、マニラ首都圏近郊の工業団地のカランバ・プレミア・インターナショナル・パーク(CPIP)に生産拠点を構えている。同拠点は、7,000人以上のフィリピン人従業員を雇用しており、コスト競争力に優れたSEMCOの主要なグローバル生産拠点の1つとして位置付けられる。2024年12月時点では、同社の世界全体の積層セラミックコンデンサー(MLCC)生産量の約半分を担っている。

同社は今回の新たな投資拡大により、電気自動車(EV)やスマートデバイス向けの車載用MLCCを生産するため、最先端かつ高度な技術を備えた製造施設を設立する。2027年7月までに商業運転を開始し、3,500人以上の質の高い雇用を創出する見通しだ。

今回適用される税制優遇措置は、2024年11月に成立したCREATE MORE法(2024年11月12日記事参照)に基づくものだ。同法では、条件を満たした企業に対し、法人所得税の引き下げや、特別法人税の適用、控除の拡充のほか、国内調達に対する付加価値税(VAT)のゼロ税率適用、輸入時のVATや関税の免除など、幅広いインセンティブを適用する。

マルコス大統領は「サムスンの既存拠点で製造される重要なハイテク製品は最も高度な技術を有しており、技術移転が非常に重要」と言及した。サムスンの主要幹部は「フィリピン国内の複数大学と連携し、フィリピン人労働者の育成や研究開発を国内で行うことで合意した」と強調した。

PEZAのテレソ・O・パンガ長官は「フィリピンの電気電子産業にとって画期的な成果だ。世界的な半導体バリューチェーンの地位を強化し、さらなる雇用の機会を生む」とコメントした。

(注)CREATE MORE法は、「the Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises to Maximize Opportunities for Reinvigorating the Economy(経済再活性化のための機会最大化を目指す企業復興税優遇措置)」の略。

(西村公伽)

(フィリピン、韓国)

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