山東省、第4回儒商大会で初の日本専門セッションを開催
(中国)
青島発
2025年11月06日
中国の山東省政府は10月29日、同省済南市で開催された第4回儒商大会(注)において、初めて日本との産業協力に特化したセッション「2025山東省と日本の産業発展マッチング会」を開催した。同イベントは医療・健康、新エネルギー、商業流通など重点産業分野での協力プラットフォームを構築し、日系企業や中国日本商会、ジェトロなどの経済団体などとの交流を拡大することを目的としており、住友商事、クボタ、シチズン時計、三井物産、丸紅、三菱UFJ銀行、日本通運など企業や業界団体、政府の関係者140人が参加した。
同イベントに登壇した葛慧君・山東省政治協商会議主席は開会あいさつで、「山東省と日本は数十年にわたる経済貿易協力を経て、互いの開放発展における重要なパートナーとなっている」と述べ、双方の企業による貿易取引の促進、企業の実際のニーズに応じたワンストップサービスの提供、デジタル経済・現代農業など新分野での協力拡大を呼びかけた。
また、于海田・済南市長はあいさつで、「2019年以降、済南市全体で累計64社の日系企業が設立され、契約ベースの外資による投資額は11億3,000万ドルに達した。2024年の対日貿易総額は70億元(約1,470億円、1元=約21円)を超え、住友商事、日立製作所、スズキなど多数の日本企業が済南で投資・事業展開している。一方、浪潮集団(大手IT企業)、力諾集団(大手ハイテク製造業)など済南市に所在する中国企業も日本に現地法人を設立しており、双方向の経済交流が活発化している」と紹介した。
医療・健康、新エネルギー分野で両国の協力深化へ
さらに、于市長は、済南と日本の産業協力の具体的方向性として、医療・健康、半導体、新エネルギー分野での生産・供給体制の連携強化、人工知能(AI)やバイオテクノロジーなど最先端分野での共同研究開発、現代物流、工業デザイン、金融サービスなどサービス産業分野での協力拡大を提示した。「済南は日本の先進技術や経営ノウハウと深く連携できる強固な産業基盤を持つ」とも強調した。
同じく登壇した日中韓三国協力事務局(TCS)の顔亮副秘書長は、「済南と日本は相互補完性が強い。済南は製造業の基盤が堅固で、日本は技術研究開発と管理に長所がある」とし、デジタル経済、環境保護、低炭素、排出削減などの分野での協力を推奨した。
このほか、大手バイオテクノロジー企業である華熙生物科技(ブルーメイジバイオテクノロジー)の尹延簫・共産党委員会書記は、「今回のマッチング会は日中産業をつなぐ『黄金の絆』となる」と述べ、アンチエイジングや再生医療などの最先端分野で協力を拡大する意向を示した。同社は2020年に日本に完全子会社を設立し、日本の医薬品、化粧品、食品企業と戦略的パートナーシップを構築している。
日本の介護サービス大手のメディカル・ケア・サービス(中国名は美邸養老服務)の董煒・業務支援部総監は、「昨年(2024年)12月に済南で初のプロジェクトを開業した。国および山東省、済南市の高齢者介護産業への政策支援を評価しており、市場発展の見通しは楽観的だ」と述べた。
儒商大会は山東省の国際交流におけるハイレベルプラットフォームで、2年ごとに開催している。第3回大会で締結されたプロジェクトのうち、14件は既に完成し、23件が着工済みで、外資系企業の投資実行額は1億7,000万ドルに達したという。今回の日本専門セッション開催は、山東省が日本との経済貿易協力を特に重視していることを示すものであり、今後、具体的な協力プロジェクトの進展が期待される。
2025山東省と日本の産業発展マッチング会の様子(主催者提供)
(注)山東省政府が開催するビジネスマッチングなどを目的としたイベント。「儒商」とは孔子の影響を受けた経営者のことを指す。山東省は孔子の生誕地・曲阜市(済寧市傘下の県級市)が所在するなど、孔子ゆかりの地域として有名。
(皆川幸夫)
(中国)
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