ジェトロ、半導体・ICT産業に関するセミナー開催、日台企業連携の新契機
(台湾、日本)
調査部中国北アジア課
2025年11月12日
ジェトロは11月6日、台湾の公的シンクタンクの資訊工業策進会産業情報研究所(MIC)との共催で、セミナー「AI駆動型社会の到来と綻(ほころ)ぶ国際通商秩序-日台半導体・ICT産業連携の新契機」をジェトロ本部(東京)で開催した。セミナーでは、半導体・ICT(情報通信技術)産業で相互補完関係を強めてきた日本企業と台湾企業が今後の人工知能(AI)駆動型社会を見据え、どのような戦略的かつ実務的な連携を図っていくかについて、台湾の半導体・ICT分野の専門家であるMICの洪春暉所長兼シニア産業最高顧問を交え、技術や市場動向を踏まえた現状と課題などを解説した。
洪所長の講演では、米国の関税政策や投資誘致、地政学的リスクを背景に、ICT産業のサプライチェーン再編が加速している現状を指摘した。今後、AIサーバーなどの高付加価値製品は米国内での生産が進む一方、スマートフォンやPCなどの製品は東南アジアや中南米(メキシコなど)、南アジア(インドなど)などへ引き続きシフトしていくとした。MICの推計によると、2025年の台湾の主要ICT製品のうち、中国でのノートPCやスマートフォンの生産比率は低下して、東南アジアや中南米での生産比率が上昇し、米国ではAIサーバーの生産比率が増加する見込みとした(添付資料図参照)。こうした動きは、サプライチェーンの配置方針が従来の「コストの最適化」から「市場の最適化」へ転換していることを示している。
また、日台連携の可能性については、日本は米州と東南アジアへの進出の歴史が長く、これらの国・地域との間で政治的・経済的な協力関係、産業クラスターを築いてきたと述べた。一方、台湾の強みは「科学園区」の開発経験で、新竹科学園区や台南、台中の園区は世界的にも成功事例として知られている。これらの経験は日本にも応用できるとの言及があった。なお、台湾の科学園区は単なる工業団地ではなく、産業・学術・研究機関を結集し、技術革新を促進する仕組みだ。このように相互補完性の高い日台のハイテク産業が双方の協力によって各地に産業クラスターを構築できれば、グローバルなマルチバリューチェーンの発展に重要な役割を果たすことができると提言した。
ジェトロ調査部中国北アジア課の清水顕司課長は講演で、AI駆動社会が到来する中、EMSやODM、サプライヤーとしての台湾企業の存在感は高まっているとした。このような中、日台企業は従来のビジネスに加え、スタートアップとのオープンイノベーションや企業コンソーシアムによる連携など、新たな協業の機会を迎えていると説明した。
洪所長による講演(ジェトロ撮影)
(富永笑美子)
(台湾、日本)
ビジネス短信 b12f916845804899




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