ハシナ前首相に死刑判決、対立政党は歓迎、隣国インド政府は静観

(バングラデシュ、インド)

ダッカ発

2025年11月19日

バングラデシュのシェイク・ハシナ前首相は11月17日、国内戦争犯罪法廷のバングラデシュ国際犯罪法廷(ICTB)において、2024年7月に起きた反政府抗議デモへの対応に関して人道に対する罪で死刑判決を受けた。前首相はインドに逃れており、出廷していない。同時に、アサドゥザマン・カーン・カマル前内務相も死刑判決を受けた一方、国家証人となったチョードゥリー・アブドゥラ・アル・マムーン前警察庁長官は禁錮5年の判決を受けた。また、ハシナ前首相とアサドゥザマン前内務相については、財産の没収が命じられた。

ハシナ前首相は、2つの罪状で死刑を言い渡された。1つは、2024年8月5日に首都ダッカのチャカンプル地区で政府に抗議する非武装の6人が射殺された事件に関する罪、もう1つは、同日にアシュリア地区で5人が射殺されたほか死後に焼却され、1人は生存中に放火されたことに関する罪だ。扇動的な発言を行い、抗議した学生に致死性の武器の使用を命じたことに関しても、終身刑が宣告された。

前政権時の野党・バングラデシュ民族主義党(BNP)のミルザ・ファクルル・イスラム・アラムギール幹事長は、この判決を受けて「バングラデシュ国民と国際社会は、倒れた独裁者とその一派による殺害、拷問、ジェノサイドといった残虐行為への正義を待ち望んでいた」と評価した。ジャマティ・イスラミ党(JI)のミア・ゴラム・パルワール幹事長もこれを歓迎し、「判決は疑問の余地を残さず、公平かつ国際的な基準を満たすものだ」と語った。

隣国のインド外務省は声明を発表し、「ICTBがハシナ前首相に下した判決を留意している。隣国であるわが国は、バングラデシュ国民の利益、特に同国の平和、民主主義、包摂性、安定性への関与を継続する。われわれはこの目的を果たすため、常に全ての関係者と建設的に連携していく」と述べ、立場を明らかにしていない。ハシナ前首相は、2024年8月まで率いたアワミ連盟を通じて声明を出し、「私に対する判決は、民主的な権限を持たない非選出政府が設置した不正な法廷で下された。裁判は偏向しており、暫定政権のアワミ連盟を政治勢力として無力化しようとする露骨で殺人的な意図を露呈している」と強く批判した。

判決日が11月17日に決まった13日と判決当日の17日、バングラデシュ進出日系企業の中には、治安の悪化を懸念し、在宅勤務や短時間勤務を導入する企業が見られた。また、工場やプロジェクト現場など、特に多くの作業関係者を抱える企業から通勤リスクに悩む声が聞かれた。

(片岡一生)

(バングラデシュ、インド)

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