経済回復進むスリランカ、労働者確保には課題も
(スリランカ)
コロンボ発
2025年11月27日
スリランカ中央銀行(CBSL)は10月31日、2025年9月の海外からの郷里送金額が前年同月比25.2%増の6億9,570万ドルだったと発表した。2025年1~9月の累計送金額はすでに前年同期比20.0%増の58億1,170万ドルに達しており、過去最高(年間)を記録した2016年の72億4,150万ドルを上回る勢いだ。スリランカでは、海外からの郷里送金が繊維製品・衣料品の輸出額や観光収入を上回る最大の外貨獲得源になっている。2025年9月末時点の外貨準備高は61億7,900万ドルで、2025年9月の輸入額(20億4,860万ドル)を基準とすると、輸入の約3カ月分に相当する。
一方、スリランカの政府高官からは、海外就労の拡大について慎重な声も上がっている。ビジッタ・ヘーラット外務・海外雇用・観光相は11月15日、同省傘下の海外雇用局(SLBFE)が主催するイベントに登壇し、海外への出稼ぎ労働者のうち約78%を熟練労働者が占めることなどに懸念を示した上で、国内で労働力を確保する重要性を強調した(「デイリーミラー」紙11月15日、「ヒルニュース」11月15日)。
スリランカ国内では、経済回復が進む半面、労働者の確保が課題になっている。CBSLが9月12日に発表した2025年第2四半期の景況感指数(100=横ばい、注)では、「事業環境」が11年ぶりの高水準となる130に達したが、「熟練労働者の確保状況」は89と相対的に低い(添付資料図参照)。スリランカ・センサス統計局(DCS)は10月27日、2025年第2四半期の労働力調査結果を発表したが、失業率は2四半期連続で3.8%と2014年以降で最も低い水準で推移している。
スリランカでは高齢化が進行しつつあり、国内の労働者確保は中長期的な社会課題となっている。DCSは10月30日、「2024年国勢調査」の結果を発表し、総人口に占める割合は15歳未満が20.7%、15~64歳が66.7%、65歳以上が12.6%だった。2012年の前回調査と比較すると、総人口が2,035万9,439人から2,178万1,800人に増えた一方で、15歳未満の割合が4.5ポイント減、15~64歳の割合が0.2ポイント減、65歳以上が4.7ポイント増となり、高齢化の傾向が確認できる。
(注)「事業環境」は前期の水準を100として指数化したもの、「熟練労働者の人材確保」は前年同期比との比較で横ばいの水準を100として指数化したもの。
(大井裕貴)
(スリランカ)
ビジネス短信 9f29661ca73c7e79




閉じる
