AIを本格活用、2025年のダブルイレブン期間の販売促進で
(中国)
上海発
2025年11月25日
中国の電子商取引(EC)大手のアリババは11月15日、中国最大のECイベント「双十一」(ダブルイレブン、注1)期間中(10月15日~11月14日)の販売促進活動結果を発表した。なお、2025年のダブルイレブンは前年より長い31日間となった(2024年11月21日記事参照)。
アリババの発表では、期間中における売上高の前年比伸び率は2022年以降で過去最高を記録したという(ただし、具体的な取引額などは2022年からは公表されていない)。
同発表によると、同社のECプラットフォーム「天猫(Tmall)」で、同期間中の売上高が1億元(約22億円、1元=約22円)を超えたブランド数は約600、前年より2倍以上成長したブランド数は3万4,091だった。また、米アップルや中国家電大手のハイアール(海爾)、美的、小米(シャオミ)、スポーツウエアのフィラ(FILA)、駱駝(Camel)、ナイキ、中国家具ブランドの源氏木語(YESWOOD)、中国ジュエリーブランドの老舗黄金などのブランドの売上高は10億元を超えた。政府による家電などの耐久消費財の買い替え補助金政策(2025年1月16日記事参照)が導入されたことで、生活家電、デジタル製品に加え、家具など住宅リフォーム時の資材の売上拡大につながったとみられる。
また、同社のECプラットフォーム「淘宝(以下、タオバオ)」は、食事や旅行などの生活サービス全般をダブルイレブンに組み込んだ。同グループ傘下デリバリー予約アプリの餓了么、旅行予約サイトの飛猪などのオンラインサービスを「大消費プラットフォーム」(注2)に統合し、新たな「プレミアム会員制度」(注3)を導入。生活シーンの全てをカバーした消費・サービスの利用が増え、VIP会員によるプラットフォームの1日あたりの平均購入者数は前年比で31%増加した。また、食料品や日用品を短時間で配達するサービス「淘宝閃購」(クリックコマース)の商品の注文数は前年比2倍超、飛猪の取引額は過去最高を更新し、前年比30%超増加した。
ほかにも、2025年のダブルイレブンではAIを本格的に活用しているという特徴がある。アリババグループのアリババクラウドは大規模言語モデル(LLM)「通義千問」をグループ企業向けに初めて導入した。北京商報(11月11日)の報道によると、タオバオは「AIによる検索」「AIによる推薦」などのツールをリリース。ユーザーがあいまいな表現で商品を検索した場合でも、10秒以内に目当ての商品を提案できるようにした。
一方、タオバオは出店者向けに、「ビジネスマネージャー」「大セールAIアシスタント」のツールをアップグレードし、1日あたり500万件以上の経営分析レポートを提供した。またカスタマーサポートのAIプログラムである「店小蜜5.0」によって、出店者は1日あたり2,000万元のコスト削減を実現している。アリババ中国EC事業AI部門責任者は、「AIによりトラフィックロジックが『ヒット商品の推薦』から『ターゲット顧客層のマッチング支援』へ転換し、精緻なデータ分析に基づいて、中小事業者もブランド露出を実現できるようになった」とコメントした(北京商報11月11日)。
(注1)中国の一大ECセールイベント。ダブルイレブンは11月11日を指す。アリババが2009年に「ネットショッピングを楽しむ日」として始めた。
(注2)「大消費プラットフォーム」は、アリババ傘下にあるデリバリー予約アプリの饿了么、旅行サービス予約サイトの飛猪などの事業リソースを統合し、ショッピングから、デリバリー、旅行、交通移動などユーザーの生活シーンの全てをカバーする消費・サービスを提供する総合的プラットフォームを指す。
(注3)タオバオが2025年8月6日に新たに導入した「プレミアム会員制度」は、ユーザーの生活シーン全てにおける消費・サービスの利用実績をもとに会員を6つの等級に分け、等級ごとに割引、特典、優遇サービスを提供する制度。
(王艶)
(中国)
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