米国関税回避で中国製品輸出先がドイツにシフトした可能性指摘
(ドイツ、中国、米国)
ベルリン発
2025年11月25日
ケルン経済研究所(IW)は11月17日、中国製品の輸出先が米国の高関税を背景に、米国からドイツにシフトする「転換」の可能性を示す報告書を公表した(プレスリリース
、ドイツ語)。中国からの輸入量が広範囲で増加し、平均価格の低下と組み合わさって競争圧力が強まっていると指摘した。輸入増加の監視強化、貿易保護措置の活用、既存の貿易保護措置の適用拡大の検討、EU域内産品の調達・使用を優先または義務付ける「バイ・ヨーロピアン」規定の慎重な適用を提言した。
調査は、ドイツ外務省の委託を受け実施した。米国の対中関税が一時的に極めて高い水準に達した2025年第2四半期に焦点を当て、HSコード6桁レベルの品目群を対象に分析。輸入量の増加に伴い価格が低下している状況で、価格分析は正確性を担保することが難しいことから、輸入量を基準に評価し、過去の変化率との比較で異常増加を判定。さらに、米国の輸入減少とドイツの輸入増加が同一品目群で重なるケースを抽出し、転換の疑いを検証した。
結果は、4,250超の品目群のうち2,241品目群で輸入量が前年同期比10%以上増加し、これらの輸入額は中国からの総輸入額の61%を占め、平均価格は5%以上低下した。輸入量が50%以上増加した品目群が中国からの総輸入額の22%を占めた一方、米国の中国からの輸入は上半期に16%減少。ドイツへの輸入量が10%以上増加した品目群の約85%は米国への輸入が減少している。
該当品目には繊維や衣料など消費財が含まれるが、化学、電気、機械、車両製造など中核分野においても転換効果が見られる。特に2025年上半期のプラグインハイブリッド乗用車(PHEV)の輸入量が前年同期比で2.3倍に増加した一方、同品目の米国の中国からの輸入額は約99%減少しており、こうした同時変化において転換の疑いが強いとしている。IWは同時に、PHEVには相殺関税が適用されない欧州の電動モビリティ自動車市場により深く浸透しようとする中国の意図的な戦略も示唆している(2024年11月6日記事参照)。
IWのユルゲン・マテス氏は「米国が中国との距離を広げる中、ドイツが中国企業の『代替市場』になりつつある」と述べ、自動車などの中核分野への圧力を警告。中国政府による支援と中国元の過小評価により、極端な低価格で製品を提供することができるとし、不公正な競争が確認される場合のEUの貿易保護の強化を求めた。
ドイツ貿易・投資振興機関(GTAI)は11月12日に発表した報告書
において、中国の輸出が米国から他地域へシフトする中、ドイツ向けが拡大し、2025年の対中貿易赤字が過去最大になると予測している。
(中山裕貴)
(ドイツ、中国、米国)
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