ベトナムの人材派遣会社エスハイがメコンデルタ地域初の日本式職業訓練校を開校

(ベトナム)

ホーチミン発

2025年11月10日

人材教育・派遣業務を行うベトナム企業のエスハイは10月18日、ベトナム南部のカントー市(旧ソクチャン省、注1)でメコンデルタ地域初となる日本式職業訓練校「Japan Proskills College(JPC)」の開校式典を開催した。同校はベトナム人のキャリア構築と日本企業の人材需要の高まりを受け、日本基準の専門スキルを備えた人材育成を目的に、2024年9月に専門学校法人として設立された。

同社は日本でのキャリアを目的とした教育機関として、2006年にホーチミン市で設立され、技能実習生や特定技能人材を派遣する人材派遣会社だ。同社の教育部門である「カイゼン(KAIZEN)吉田スクール」は技能実習生、特定技能、技術者、留学生を目指す学生のための日本語育成コースを有しており、ベトナム人の教育・育成に力を入れている。

新設されたJPCは、同社で初の学校法人であり、入学資格は高等学校などの卒業資格を有する者に限定されている。特定の職業(機械、宿泊、外食、介護、農業、水産、自動車整備など)で必要とされる専門の日本語や日本的ビジネスマナーだけでなく、宿泊・外食・介護などの職業に従事するための知識や技能を身につけることができる。これまでの外国語センターでの一般証明書とは違い、18カ月の専門学校コースにより、国家基準に準拠した正式な学位(中級職業学校資格、注2)を取得可能とする。現在、JPCカントー本校では約580人が日本語短期コースに在籍するほか、これまでKAIZEN吉田スクールのホーチミン校および各分校に在籍していた学生も傘下に収め、合計約2,500人の学生数を擁する。

JPCでは今後、ベトナムの全国立大学・短期大学との単位互換制度の活用や、ベトナムに進出している日系企業のインターンシップが受けられるプログラムを設置するなど、学生の多様な進路ニーズに対応できる環境を備える。

式典では、ビンロン技術師範大学やソクチャン職業短期大学、本多プラスベトナムなどとMOU(覚書)が締結された。愛知県を本社とするプラスチック成形メーカーの本多プラスでは、約100人のベトナム人技能実習生、約30人の技術者が働いている。

エスハイの代表取締役であるレ・ロンソン氏は式典で、学術的な知識と経験の蓄積の重要性を語り、さらにJPCの卒業生には、「将来、ベトナムの飛躍を牽引する起業家・経営者として活躍することを期待している」と述べた。

今後、JPCの専門学校コースの入学定員を1,000人から2,000人に拡大する予定で、募集地域はカントー市周辺および全国に拡大するとしている。

写真 専門学校法人Japan Proskills College(JPC)式典の様子(ジェトロ撮影)

専門学校法人Japan Proskills College(JPC)式典の様子(ジェトロ撮影)

写真 本多プラスベトナムとのMOU締結(ジェトロ撮影)

本多プラスベトナムとのMOU締結(ジェトロ撮影)

(注1)ベトナムは政治・行政の効率化や経済発展の促進を目的として、7月1日から、これまでの63省・市(6つの中央直轄市と57省)から、新たに34省・市(6つの中央直轄市と28省)に再編した。カントー市は旧カントー市、旧ソクチャン省、旧ハウザン省が合併(2025年7月1日記事参照)。

(注2)ベトナム国家資格枠組みに定められている資格・学位は、博士、修士、学士、準学士、中級職業学校資格がある。

(川崎美奈子)

(ベトナム)

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