人権デューディリジェンス実践に焦点、UNDPが研修会実施

(ブラジル、世界、日本)

サンパウロ発

2025年11月13日

国連開発計画(UNDP)ブラジル事務所は11月4日、ブラジル日本商工会議所、ジェトロとの共催で、「人権デューディリジェンス(HRDD、注1)に関する研修会」を実施した。これは、2025年3月に実施した研修会(2025年3月10日記事参照)に続く実践編の位置付けで、日系企業関係者ら32人が参加し、自社の実務に即した行動計画の策定に取り組んだ。

UNDPブラジル事務所のガバナンスと司法ユニットのロザナ・トマジニ国際協力プロジェクトマネジャーは、この研修会が日本政府資金によるUNDPの「ビジネスと人権(B+HR)アカデミー」の一環と説明し、目的は、日本企業が事業を展開する国々で責任あるビジネス慣行を促進し、国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs、注2)の適用を強化することにあるとした。

研修会では、HRDDが「特定、防止、軽減、修復」の継続的なプロセスであることや、リスク管理での戦略的重要性が解説された。ケーススタディーでは、オーガニックバナナの生産輸出業者をモデルに、バリューチェーンマッピングの手法を紹介され、生産から最終消費者に至る各段階での人権リスク特定手法が示された。さらに、UNDP提供のチェックリストや是正メカニズム構築法、ステークホルダーとの対話戦略などの解説もあった。

実践的なワークショップも行われた。「ガイダンスセッション」として、参加者はまず、学んだチェックリストで予備診断を実施し、その後、診断結果に基づき、リスク特定やギャップ分析、監視指標の設定など、予備的な行動計画(アクションプラン)の構築に取り組んだ。参加企業からは、HRDDを自社の実際の取り組みに落とし込む際の留意事項についての質問もあった。最後には各グループが作成した行動計画を発表し、今後の課題や実践に向けた活発な意見交換が行われた。

写真 研修会で説明するUNDPブラジル事務所のロザナ・トマジニ氏(ジェトロ撮影)

研修会で説明するUNDPブラジル事務所のロザナ・トマジニ氏(ジェトロ撮影)

(注1)人権デューディリジェンス(HRDD):企業活動での人権への悪影響を特定、防止、軽減し、その対応を説明するための継続的なリスク管理プロセス。

(注2)国連ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs):2011年に国連人権理事会で承認された企業と人権に関する国際的な行動規範。

(中山貴弘)

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