ジェトロ、西オーストラリア州で水素ミッション実施
(オーストラリア、日本)
調査部調査企画課
2025年11月13日
ジェトロは10月27~30日、オーストラリアの西オーストラリア(WA)州で、「水素ミッション」を実施した。エネルギー関連事業に携わる日本企業や公的機関など13社・機関の18人が参加した。ミッション期間中、WA州都のパースや、政府の水素ハブ(水素産業地区)として選定されているクイナナ地域やピルバラ地域を訪問し、主要大学や地場企業、工場施設などを視察すると同時に、現地政府や企業の関係者を交えたネットワーキングを行った。
西オーストラリア大学(パース)では、Future Energy Exports Cooperative Research Centre(FEnEx CRC)を視察した。同研究所はクリーン水素の利用と輸出を促進することを重要な目標の1つとして掲げている。その取り組みの一環として、パース南郊に位置するクイナナ地域に水素、脱炭素、エネルギー転換分野向けの研究開発施設Kwinana Energy Transformation Hub(KETH)
の建設を進めている。同プロジェクトに対し、WA州政府は1,500万オーストラリア・ドル(約15億3,000万円、豪ドル、1豪ドル=約102円)の助成金を提供しており、2026年に稼働する予定だ。
また、カーティン大学(パース)では、水素製造を中心に貯蔵関連技術の研究を行う先端施設を見学した。同研究室は、海水を含む未精製の水源を用いた水電解を可能にすることで、グリーン水素の製造コストを従来の60%まで削減できる技術を開発した。同技術はカーティン大学での研究や学習などを通じて産業界や社会全体に大きな利益をもたらす可能性のあるイノベーションをたたえる賞「Curtinnovation Awards」で、最高賞を受賞している。
カーティン大学への訪問(ジェトロ撮影)
WA州の北西部に位置するピルバラでは、グリーン水素を生成し、隣接する液体アンモニア製造工場でグリーンアンモニア製造を行うYuriプロジェクトの実証プラントを見学した。同プロジェクトはピルバラ地域にプラントを構え、太陽光パネルや水素製造装置を用いてグリーン水素を生成し、グリーンアンモニアを製造するという同国初の取り組みになる。
WA州の水素分野のスタートアップとして注目を集めるCarbon280にも訪問した。同社は1立方メートル当たり79.6キロの水素貯蔵が可能なHydrilyteと呼ばれる貯蔵技術を開発している。従来の液体水素よりも12.5%ほど高密度の水素の貯蔵を実現しているため、より効率的な水素の輸送が可能となる。
Carbon280のパイロットプラント(ジェトロ撮影)
参加企業からは、「今回得られた知見とネットワークを生かし、今後も着実に脱炭素分野の事業開発に取り組んでいきたい」「現場に触れることで、水素の社会実装の現状を感じ取ることができた。自社に持ち帰って事業に役立てたい」など、今回のミッションでの学びを今後のビジネスに生かしたいとの声が聞かれた。
(山口あづ希、椎名佑介)
(オーストラリア、日本)
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